神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS
藤沢版 公開:2023年12月22日 エリアトップへ

かこさとしさん 未発表原稿見つかる 「くらげのパポちゃん」

社会

公開:2023年12月22日

  • X
  • LINE
  • hatena
かこさとしさん(加古総合研究所提供)
かこさとしさん(加古総合研究所提供)

 「からすのパンやさん」などで知られる絵本作家・かこさとしさん(1926―2018)の未発表作品「くらげのパポちゃん」の原稿が片瀬山の自宅で発見され、このほど公表された。南の海で戦死した父を持つ子どものために、クラゲの主人公が冒険をするという物語。「戦争の醜さとパポちゃんの純粋さが対照的で、胸を打たれる作品」と長女の鈴木万里さん(66)は話す。

 今年から刊行されている「かこさとし童話集」(偕成社)の編集作業中、見たことのない14枚の原稿を鈴木さんが書庫で発見した。「戦争の悲惨さを知らない今の子どもたちの学びに役立てられるのではと感じた」という。

 戦争で父親を失った男の子・富吉の成長を、くらげの「パポちゃん」が南の海に沈む父親の甚吉に伝えに行くというあらすじ。「困っている人のためにすぐに行動するパポちゃんの姿にはハッとさせられる」と作品の魅力を語る。

背景に戦争体験

 本作が書かれたのは、1950年から55年までの5年間。かこさんが川崎市の工場で働きながら、地域生活を支援するセツルメント活動を行っていた時期と重なる。戦争で親を失った多くの子のため、紙芝居などを作り発表していた。「戦後10年ほどが経ち、復興の中で忘れられていく傷跡や、残された孤児たちについて父は常に考えていた」と鈴木さん。「当時の情報では、出征した兵士がいつどこで亡くなったかもわからない。工業地帯の海に浮かぶクラゲを眺めながら、遠くの地の戦没者に思いを馳せていたのでは」と推測する。「辛い現実を前に、自分にはできない夢のようなことを、父はファンタジーに託していた」

 同時期に書かれ、一昨年に発売された「秋」にも、自身の戦争体験が語られている。「今回の原稿も、書かれたのは50年9月から55年10月まで。毎年その時期になると、終戦の前年の秋に見た戦禍を思い出していた」と、かこさんの生涯に貫くテーマとの関連を説明する。

 「重たいテーマではあるが、残酷な描写などは少なく、楽しんで読める冒険譚となっている」と鈴木さん。今回の発見を受け、内容を知った人たちから多数の反響が寄せられたという。「皆さんが世に出してほしいと言ってくださっているのは本当にありがたいこと。今後何らかの方法で刊行できれば」と展望を語った。

発見されたかこさんの直筆原稿
発見されたかこさんの直筆原稿

藤沢版のトップニュース最新6

市歌が発車メロディーに

JR藤沢駅

市歌が発車メロディーに

10月1日から使用開始

9月6日

50年の歴史に幕

イトーヨーカドー藤沢店

50年の歴史に幕

来年1月13日に閉店へ

9月6日

「逃げる」選択できる社会へ

「逃げる」選択できる社会へ

自殺対策 学生団体訴え

8月30日

体育館に空調整備へ

藤沢市

体育館に空調整備へ

小中学校6校が対象

8月30日

藤沢丸ごと芸術の場に

藤沢丸ごと芸術の場に

「建物を持たない劇場」始動

8月23日

ダイビング拠点を整備

片瀬漁港

ダイビング拠点を整備

地域活性や藻場再生視野

8月23日

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 9月6日0:00更新

  • 8月30日0:00更新

  • 8月23日0:00更新

藤沢版のあっとほーむデスク一覧へ

バックナンバー最新号:2024年9月6日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook