人口構造変化
「自然が多くて、交通の利便性が高い。それに郷土愛のある人が多いとも感じる」
3年前、川崎市から転入した40代服飾デザイナーの女性は藤沢市の印象をそう語る。出産を経てより子育てに適した環境を求めて転居。昨年3月には藤沢商工会議所の創業支援を活用し起業もした。
「藤沢は多様なライフスタイルを受け入れる風土がある。コロナ禍を機に従来の金銭的な豊かさではなく、自然や解放感を求めて移住する人も多いのではないか」
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藤沢市はファミリー世帯の転入を背景に人口増が続く。1月1日現在の県内人口は少子高齢化が進行したことで3年連続の減少となった一方、藤沢市は2021年7月に人口44万人を突破。以降も微増を続けている。
市が17年度に実施した将来人口推計では、30年の約44万4千人がピークとしていたが、23年度には5年先の35年がピークと予測を更新。1万人多い約45万4千人に到達する見通しと明らかにした。人口減社会に突入する中、10年以上にわたって人口が増え続けるのは全国的にも稀だ。
人口増はまちの活力に直結し、市税増など恩恵は大きい。ただ、長期的に見れば人口減に転じた後を念頭に置かねばならず、施策の立案に自治体関係者が頭を悩ませる。
その一つが市立学校の再編だ。市内35校ある小学校のうち、学級数が31以上の「過大規模校」は2040年に6校にのぼる見通し。特に辻堂小学校の児童数は1200人を超える「マンモス校」で、22年度県内公立小としては最多になった。同小に息子2人が通う40代女性は「特別教室の転用や仮設校舎を建設しても教室は児童でいっぱいで、すでに”パンク寸前”の状態」と明かす。
市教委は24年度から5年間、大規模な学区見直しを実施する方針だが、過大規模校は南部に集中しており、解消のハードルは低くはない。
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高齢化の進展も顕在化しつつある。65歳以上の高齢者の割合を示す市の高齢化率は24・54%(24年1月1日現在)。全国平均を下回るものの、高度経済成長期に湘南ライフタウンの整備で一気に人口が増えた湘南大庭地区では33・23%と急速に高齢化が進んでおり、「3人に1人が高齢者」の局面に入った。
同地区で20年以上、民生委員として活動してきた女性は「独居の方が増えた一方、支援が必要だと声をあげられない人も少なくない。高齢者が置き去りにならない仕組みが必要だと思う」と指摘する。
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14年度以降、国の普通交付税を受け取らない「不交付団体」で、比較的良好な財政状況を維持する同市。ただ将来的な人口構造の変化は避けられず、財政面でも計画的な施策執行が欠かせない。中長期の視点に立ったまちづくりのグランドデザインをどう描けるかが、リーダーの手腕に問われている。(連載おわり)
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