能登半島地震では、多くの人々が日常生活を奪われ、医療現場にも大きな爪痕が残った。災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として被災地で活動した藤沢市民病院副院長の阿南英明氏は、水や電気が途絶え通常の医療が提供できない現地の状況や、災害への備えとしてのオンライン診療の重要性を説く。
──被災地の医療現場で最も困難だった点は。
「入院患者にとって、病院での暮らしは生活そのもの。水や電気などのライフラインが途絶えてしまうと医療が提供できなくなってしまう。さらに、現場で働くスタッフは医療従事者であると同時に被災者でもある。自宅から通う職員は20%ほどで、避難所から来る人や病院に寝泊まりする人が多かった。短期間ならがんばれるが、何週間も続き長期化すると心身に限界が来る」
──遠方避難で被災地を離れる人も多い。
「子どもが遠くに避難するとなれば、一緒に行く人も多い。働く人が居なくなることで、医療施設がもたなくなる可能性もある」
──現地では高齢化率が高い。
「普段は施設で元気に過ごした高齢者が、避難所で体調を崩し、医療が必要になるケースが非常に多かった。医療の需要が一気に増えてしまう」
──関東地方も大地震のリスクを抱えているが、藤沢市で同じような災害があった場合の備えは。
「電気や水の供給が長期間途絶えることへの相当な覚悟が必要になる。そう簡単には復旧しない。44万人の中からかなりの方が避難所に行くことになり、給水車も足りないだろう。人口の多い神奈川では圧倒的な物量不足になる。水や食料の備蓄も3日間では足りない。個人や地域での備えが重要だ」
──医療面での備えでは、オンライン診療の重要性を説かれている。
「能登半島地震の被災地では、水よりも携帯電話の電波が復旧する方が早かった。オンラインで受診できれば、薬を届けることもでき、医療の効率化だけでなく感染症リスクも減らすことができる。そのためには、医者と患者の両方が普段からオンライン診療に慣れておくことも重要。緊急時にいきなりでは誰でも難しい」
──ネット環境やデリバリー網、輸送用ドローンなど、既にある技術だけでもかなりのデジタル化が可能に思える。
「時代劇では具合が悪くなると医者を呼びに行くが、いつの間にか体調の悪い人が医者に出向くようになってしまった。医療機関に行けなければ医療を受けられない現状を変えたい。デジタルの可能性はとても広く、まさに災害時に生きる。まだ私たちは使いこなせていないと感じる」
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