藤沢市内最大のターミナル駅で、小田急線70駅の中でも4番目の乗降客数を誇る小田急江ノ島線「藤沢駅」。日々多くの電車が発着を繰り返すのは市民お馴染みの光景だが、実は独特な線路構造を採用している。この秘密をひも解くフィールドワークが18日、ロマンスカーミュージアム(海老名市)の主催で行われた。本来急こう配を登るための「スイッチバック式」を採用する、その理由とは―。
自治体と連携し、沿線地域の魅力を発信する企画の一環。フィールドワークは「日本最大級のスイッチバックの謎に迫る」と銘打ち、鉄道ファンなど19人が参加した。
同駅はJR藤沢駅、江ノ電藤沢駅に次いで1929年に開業。元来、都心から江の島に観光客を輸送するための路線で、同電鉄によるとピーク時には1日あたり約220万人が利用したという。
「スイッチバック式」は険しい斜面を登坂、降坂するために進行方向を変えながら走る仕組みで、県内では箱根登山鉄道が採用している。
一見、藤沢駅は電車が折り返して発着する終着駅だが、相模大野から藤沢駅に到着後、先頭と最後尾の車両を入れ替えて片瀬江ノ島駅に向かうスイッチバック式だ。同電鉄では唯一で、規模としては日本最大級という。
なぜ現在のような形になったのか。同館学芸員の知野芙佑子さんは「路線を通すときの土地の都合だった」と解説する。
知野さんによると江ノ島線を開業する前、検討していたのは今とは別のルートだった。相模大野ではなく町田から分岐し、辻堂から鵠沼をむすぶ構想だったが、他社の路線が先行して計画されていたため却下に。南北に走る相模大野-藤沢間をそのまま伸ばす案では江ノ電と進路が重なってしまう。藤沢駅を通り抜けて東側に抜ける案も土地価格が高く、勾配や川があり整備が難しい。結局、藤沢駅を起点にして西側を「くの字」に回り込んで鵠沼方面に向かうスイッチバック式に落ち着いたという。
114→8本に
かつては各駅停車や急行などほぼ全ての電車が藤沢駅を通過。平日は1日114本がスイッチバックしていたが、22年3月のダイヤ改正により現在はロマンスカーの一部など8本を残すのみに。3本の複線で行先が異なる電車を行き来させるには複雑なダイヤを要したが、改正に伴う各駅停車の発着番線変更や分離運転で運行上の支障もほとんどなくなった。
「車両は減ったが、スイッチバックの奥深さと面白さは今も生きている」と知野さん。フィールドワークに家族3人で参加した鵠沼海岸在住の天海晴登さん(9)は「信号所が見学できてうれしかった。運行の裏側を知って、小田急がより好きになった」と笑顔を見せていた。
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