高齢化と担い手不足から全国的に農業従事者の減少が課題となる中、元会社員の経歴を生かした独自の視点で事業を成功させている若手農家がいる。湘南佐藤農園(亀井野)代表の佐藤智哉さん(44)。生産体制や効率を細かく見直し、過去10年で売上を10倍にまで伸ばした。柔軟な発想による農業経営は、ハードルが高いとされる新規就農の一つのヒントにもなりそうだ。
小田急線善行駅と六会日大前駅の間に位置する同農園。露地と施設栽培計約3haの土地でトマトやブロッコリー、ネギ、枝豆など年間約20品目を育てている。
大学卒業後、人材派遣の企業に就職。代々農業を営む家系の妻、夏生さん(43)と結婚し、義父が他界した翌14年に同園を事業承継した。
だが、直面したのは農業で生計を立てる難しさだった。承継の数年前、竜巻で深刻な被害を受けたこともあり、家族を養うのが難しい。
そこでまずは生産体制を徹底的に見直した。特定の品種に偏って栽培すると、天候や相場など外的要因で価格が変動し、場合によっては野菜を廃棄しなくてはならない。一方、少量多品種なら値付けを主導でき、全量直販もできる。さらに15年からは独自の栽培方法「アイメック栽培」によるフルーツトマトの生産を開始。甘く、高栄養なトマトはメディアでも度々取り上げられ、売上は5年で4倍になった。
6次産業化も
次に取り組んだのが6次産業化だ。トマトは直売でも人気だったが、どうしても規格外やわずかなキズで商品にならないものがある。
目を付けたのがトマトソース。ピザを販売しようと都内や横浜など有名なピザ屋をのぞくと、いずれもホール缶を使っていた。職業柄、生産の裏事情は知っていた。
「ソースは勝てる」。そう確信した。生地も試行錯誤を重ね、21年からはキッチンカー「畑のキッチン」を出店。翌22年6月には善行駅前に店舗もオープンさせた。
狙いは的中。自慢の野菜をふんだんに使ったピザは次第に人気となり、多い日にはキッチンカーで100枚近くが売れる。近年は農産物の売上と並ぶほどに成長した。
援農ボランティア講師や市の農業委員も務める。農業が逆境にある中、新規就農者に提案するのは「半農半X」という考え方だ。
「都市近郊は農地が限られ、農業だけでは無理がたたる。テレワークなど企業の働き方も変わりつつある。半分は農業、半分は収入を得られる何かというスタイルが時代に合っていると思う」
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