1923年9月1日、相模湾北西部を震源とするマグニチュード7・9の関東大地震が発生した。10万5千人もの犠牲者を出した未曾有の災害から101年を迎える今なお、県西部を強い揺れが襲うなど予断を許さない状況が続く。我々ができる備えとは。鈴木恒夫藤沢市長に聞いた。
――関東大震災では市内でも死者221人、行方不明者50人に及びました。そこで得た教訓は。
「東京や横浜をはじめ火災被害が大きかったと認識しています。家屋倒壊によって火の粉や焼屑が飛散したことで、可燃物に燃え広がったとされています。これを教訓とした全般的な対策として、建築物の耐震化を図ってきたことが今日の建築基準法につながっています。本市においては家屋倒壊による被害を免れ、避難所での生活を送らなくても良いよう、耐火・耐震化を促すと共に、地震に伴う大規模火災の輻射熱などから逃れるため、現在24カ所の指定緊急避難場所(大規模火災)を設けています。加えて、当該緊急避難場所への避難路沿いには、68本の誘導標識柱や2千基を超える街頭消火器を整備しています。また、津波からの避難は喫緊の課題と捉えており、避難先となるビルの拡充や民間施設の整備事業に補助するほか、誘導標識や津波フラッグの設置を進めています。今年度は、避難が長距離となる片瀬海岸3丁目で津波避難施設の建設を始めるなどの施策を展開中です」
――盆期間中に、県西部で地震がありました。市内の被害状況は。
「本市でも震度4を観測しましたが、幸いにも被害の報告はありませんでした。どのような状況に見舞われるか分からなかったことから、市としては状況確認や情報収集ができるよう、万全の体制を敷いてきました。今後も市民の不安を軽減するべく、必要な情報を速やかに発信できるように努めていきます」
――専門家によると、先の県西部地震は南海トラフ地震とは関係ないとしていますが、もし市内で大地震が発生した場合の被害想定は。
「藤沢市地域防災計画では、大きな被害をもたらすとされる相模トラフを震源とする関東大震災の再来モデルを想定地震としています。被害は全壊の建物が2万8010棟、死者3260人、避難者数約24万人のうち、指定避難所への避難が約18万人と想定しています。また本市は相模湾に面した5Kmを超える海岸線を有しているため、津波や液状化による被害も想定されます。津波被害については地震とは別に被害を想定しており、約4・7平方キロメートルが浸水、3万世帯6万6千人ほどの住民と多くの観光客が避難の対象となり、被害は甚大なものと捉えています」
――地震被害を最小限に抑えるための市の対策は。また、各家庭や個人ができる備えは。
「市内には81カ所の指定避難所を設け、それらを13の市民センター・公民館が地区防災拠点本部として運営することにしています。多くの方々が避難所などへ避難された場合、そこでの生活には十分な配慮をしなければなりません。例えば空調をはじめとした保健衛生の観点やプライバシー確保、女性の視点、さまざまな特性への対応、電源などエネルギーの確保といった取り組まなくてはならない課題は山積しており、課題解消に向けて一つずつ着実に進めていきたいと考えています。備蓄食や毛布、トイレ個別処理袋など基本的な防災備蓄資機材については2022度に指定避難所への避難者分を充足していますが、これからは在宅避難者のための備蓄もする必要があります。市はこうした「公助」に取り組んでいますが、災害時に避難しなくても良いように、市民の皆さんにも「自助」に取り組んでもらいたいと思います。具体的には、自宅の耐火・耐震化や家具の転倒防止、避難生活を最低3日間、できれば7日間持続できるように備蓄してもらうほか、自分自身や家族との連絡手段の確保、万が一の避難に備えた行動計画、避難ルートの想定などです」
――地震以外にも台風大型化、線状降水帯といった風水害対策も重要だと思います。防災について、どのように市民へ啓発していますか。
「今年は元日の能登半島地震から幕を開け、日向灘を震源とする地震に伴う南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたほか、今月9日には県西部地震が発生しました。風水害についても台風第7号が関東をかすめ、東海道新幹線の一部区間で終日運休になるなど大きな社会的影響を及ぼしています。あす31日(土)には市役所本庁舎で「ふじさわ防災フェア」を開催します。地震や風水害に対する市民の意識が高まっている状況を捉え、市防災部門だけでなく、たくさんの関係者とのマルチなパートナーシップにより、市民に分かりやすく親しみやすい啓発を展開していきたいです。特に起震車については昨年度、VRと揺れを連動させる最新デジタル技術を用いた地震体験車に刷新しましたので、多くの市民に体験してもらい、よりリアルな体験によって備えを万全にしてほしいと思います。また、昨年度から事業者の協賛を得て、中学生向け防災啓発冊子『ふじさわ防災ナビJr.』を作成し、若い世代への教育現場での啓発を進めていくほか、市民が防災情報を入手しやすいように、防災アプリ『HAZARD ON(ハザードン)』を導入してきました。今後も多くの方々の理解と協力により、機会を捉えた効果的な啓発に取り組んでいきますので、どうぞよろしくお願いします」
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