毎日の美味しい食事は健康の基本。そのために大切なのが歯と口腔環境だ。11月8日の「いい歯の日」にあわせて、藤沢市歯科医師会の地域保健部理事の石井宏知さんに、近年の歯科医療の現場や歯と口を健康に保つためのポイントについて話を聞いた。
近年は医療技術の進歩や歯に対する意識の向上などから、虫歯(う蝕)の患者数は減少傾向にあるという。一方で、歯を失う原因で最も多い「歯周病」による来院者は多く、石井さんは「歯周病の影響が歯だけでなく全身に及ぶことが広く周知されるようになり、気にされる方が増えています」と話す。
歯の汚れから出る毒素が歯ぐきの炎症などを引き起こす歯周病。初期は痛みが少なく静かに進行するため、放置したり我慢したりする人も多いが、進行すると歯を支える骨が破壊され、気が付いたら歯がグラグラして抜けてしまうことも。
そして、歯を失うだけでなく、歯周病は糖尿病や心臓病などと深い関わりがあることが判明している。
石井さんは「さまざまな研究の結果、歯周病が全身に大きな影響を与えていることが分かっています。健康な方と比べて、糖尿病の方は抵抗力が下がっており、感染に弱い状態といえます。歯周病と糖尿病が共に体に悪い影響を与え続け、互いに悪化させていく相関関係があるのです」と警鐘を鳴らす。
また、手術前や妊娠期なども歯科医療が大切になるという。「最近では脳や心臓、整形外科など、大きな手術の前に歯周病治療をすることが一般的になってきています。それだけ、歯周病のリスクが大きいということです」と解説する。
毎日の歯磨きとプロのケアを
歯周病は特に40代から急増するといわれる。自分では気づきにくい歯ぐきの異常を早期に発見するために、大切なのが歯科健診だ。
「もちろん毎日の歯磨きは歯の健康の基本ですが、歯ブラシだけでは汚れを完全に除去することはできません。いつの間にか蓄積する歯と歯茎の間の歯周ポケット内の汚れなどは、簡単には除去できないのです」と石井さん。「毎日のブラッシングとプロのケアは、歯と口の健康を守るための車の両輪のようなもの。どちらも欠かせません。定期的な健診をおすすめします」と呼びかける。
市内185人の歯科医師が会員となっている同会では、毎年藤沢市の成人歯科健診に協力している。「痛くなる前の早期発見と治療は、何よりの対策です。私たち歯科医も、もっと身近に感じていただけるよう、患者様に寄り添った治療に取り組んでいきたいですね」と笑顔をみせる。
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