笛田在住漢那さん 琉球国王の書を寄贈 沖縄美ら島財団に
第18代琉球国王、尚育王(1813〜47年)による直筆の漢詩の書を、笛田在住の漢那(かんな)肇さん(73)が一般財団法人沖縄美ら島財団に寄贈した。これを受け9月11日、同財団による感謝状の贈呈式が漢那さん宅で行われた。関係者は「尚育王は書家として知られており、沖縄の歴史を伝える国宝級の文化財」と話す。来年度中には同財団の施設で展示される予定だという。
「国宝級の発見」と専門家
尚育王の玄孫(やしゃご)にあたる漢那肇さん。書は祖母の漢那(旧姓・尚)まさ子さんが継承し、晩年鎌倉に移り住んだ際に持ち込んだとみられる。肇さんは昨年亡くなった母の遺品を整理していたところ、この書を発見したといい、今年の7月に一般財団法人沖縄美ら島財団へ鑑定を依頼していた。
1838年に書かれたとされるこの書は、当時沖縄に滞在していた清の官僚・林鴻年(りんこうねん)へあてたもの。随所に高い技術が見られ、書家として知られている尚育王の特徴がうかがえるという。
同財団の上江洲安亨学芸員は「歴史的背景や、書の内容から尚育王の直筆とみて間違いない。2006年に国宝指定を受けた尚家の文化財と同等の価値がある」として寄贈に感謝。
肇さんは「私の家に埋もれたままではもったいない。多くの人にこの書を見ていただき、沖縄の歴史を感じてもらえれば」と話した。
琉球と鎌倉の縁
肇さんの祖母まさ子さんは1892年、琉球王国最後の国王・尚泰王の五女(尚育王の孫)として生まれた。日本政府による1879年の琉球処分以降、尚家の人々は多くの文化財とともに、東京など首都圏に移り住んでいた。
まさ子さんに書が継承されたのは1910年、同じく沖縄出身で海軍軍人の漢那憲和(左説明文参照)と結婚した際だとみられる。肇さんによると尚家の別荘が鎌倉にあったこともあり、1960年頃、まさ子さんが65歳前後の時に鎌倉に移り住んだ。病で身体は不自由になりながらも85歳まで元気に暮らしたという。肇さんは「祖父憲和の名を知る人は多かった。今回は尚家の末裔である祖母のことを知ってもらう機会にもなって嬉しい」と話した。
書は今後、同財団によって修復され、来年度中には展示される予定だという。美ら島財団の花城良廣理事長は「これも何かの縁。いつか鎌倉でも展示ができれば」と話した。
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