第8回武井武雄記念日本童画大賞を受賞した 佐藤微子(ひでこ)さん 七里ガ浜在住 41歳
「自然体の表現続けたい」
○…「童画」という言葉を作りだし、子どものために芸術性の高い作品を作り続けた武井武雄氏の業績を記念する「日本童画大賞」で絵本『なんかちょうだい』が最高賞を受賞した。鉛筆や絵の具、版画などを使った作品は「不思議な色合いのコラージュ画でページから飛び出してくるよう」と評価された。「知らせを受けたときは、とにかくびっくりした」とほほ笑む。
○…横須賀市出身。小さい頃から絵や工作が好きで、自然とものづくりに憧れを抱いた。高校卒業と同時に岐阜県飛騨高山にある陶芸の専門学校へ進学したが、そこで出会ったのは意外にも木版画。「自分には彫ったり刷ったりする過程が合っていた」と、その表現にのめり込んだ。就職などを経て10年ほど離れた時期もあったが「なくてはならない自分の一部だと気付いた」と30代に入り一念発起。多摩美術大学の生涯学習講座に参加し、約4年間、毎週工房へ通った。
○…絵本の物語は、いつも出会う人たちに「なんかちょうだい」と言う主人公が、あることがきっかけで自分と向き合うようになり、「人に与える人」になるというもの。誰かへのメッセージとは意識せずに自然と内から出てきたストーリーで、「作っている時は子どもが遊びに夢中になっているように、とにかく楽しかった」といたずらっぽく笑う。そうして生まれた主人公の姿は自身に重なるという。「昔はもっとうまくなりたいという気持ちばかりが強かった。大学の先生から表現に決まりはないと言われたことが肩の力が抜けるきっかけになり、今の表現の核になっている」と振り返る。
○…過去の受賞作品の多くが大手出版社から出版されるなど、同賞は新人作家の登竜門とされているが、今後の目標は「まずはジャンルにとらわれずに表現できる環境にいること」と気負いはない。そのしなやかな姿勢から、また新たな作品が生まれていく。
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