鎌倉のとっておき〈第38回〉 谷戸にたたずむ、神の宿る木
梛(なぎ)という木を知っていますか?マキ科の常緑高木で雌雄異株(しゆういしゅ)。海の「凪」に音が通じることから航海の安全を司る木として、古来より船乗りたちの信仰を集めてきました。
熊野神社の総本宮、和歌山県の熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)には推定樹齢千年の大樹の御神木があり、平清盛の嫡男である平重盛の手植えと伝えられています。伊豆山神社にも御神木の梛の木があり、北条政子と源頼朝が逢瀬を重ねた場所であることから縁結びの木としても知られてきました。
鎌倉では頼朝の墓や壽福寺の山門の横、光則寺の境内などで見ることができます。鶴岡八幡宮には大石段の右側に約20メートルの高さの大木があり、『新編相模国風土記稿』にも2010(平成22)年に倒伏した大銀杏と同様に扱われる記載で登場しています。
昨年5月に開館した鎌倉歴史文化交流館にある梛の木は、扇ガ谷の自然に囲まれた庭園の一角に植えられています。
広々とした石畳の庭園に立つと、かつて無量寺谷(むりょうじがやつ)と呼ばれた谷戸が生み出すさまざまな音が聞こえてきます。山から染み出す水の音、木々を揺らす風の音、鳥や小動物たちの生活音。そんな豊かな自然に包まれながら、さほど大きくないその木は、元個人宅だった建物の新たな船出を見守るかのように静かにたたずんでいるのです。
鵜飼友里
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