市はこのほど、「鎌倉市長谷子ども会館」(長谷1の11の1)を4月28日(土)で閉館すると発表した。耐震診断の結果、大地震による倒壊の危険性が高いと判断した。保存活用については今後検討する。
1908年(明治41年)に個人の別邸として建築された同館は、木造2階建て、延べ面積132・63平方メートル。古代ギリシャ・ローマ建築を思わせる円柱をバルコニーに備えるなど、クラシックな意匠が随所に見られる。明治期の面影をいまに残す貴重な歴史的建造物として、2006年には、国の登録有形文化財に指定されている。
『鎌倉近代建築の歴史散歩』(吉田鋼市著、発行・港の人)によると、土地の所有権は36年(昭和11年)に、桑名出身の富豪の家系にある諸戸民和氏に相続され、長年にわたり「諸戸の洋館」と呼ばれていたという。
80年(昭和55年)に鎌倉市に寄贈され、長谷子ども会館となった。1階に図書室やプレイルームを備え、子どもが自由に遊ぶことができる場所として、年間約1万人が利用している。
外壁が劣化剥落
市青少年課によると、建築からおよそ110年を経た現在の建物には、老朽化により屋根のスレート材に激しい劣化が見られるほか、昨年10月に発生した台風の影響で、バルコニーや外壁の一部の剥落が顕著になっているという。
そのため、市は地域の建築設計事務所と協力して1月から3月にかけ、耐震診断を実施。木造建築物の耐震性を示す指標である「上部構造評点」が、基準となる1・0を大幅に下回る(最小値0・16)ことが判明した。
診断結果を受け、市は「大規模地震で倒壊する可能性が高く、利用者の安全確保を図る必要がある」とし、4月28日付での閉館を決めた。
5月以降については、第一子ども会館(由比ガ浜2の9の13)、鎌倉子育て支援センター(由比ガ浜3の11の48)など近隣施設の利用を呼び掛けている。
保存や活用について、市は「今後検討する」としているが、補強工事を行う場合は、国の登録有形文化財であることから、外観や内部の意匠を損なわない設計が必要との考えを示した。
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