昨年急逝したアーティスト・楳本(うめもと)亮一さんの回顧展が若宮大路沿いのビルの一角にある「道ギャラリー」で2月18日(火)まで開催されている。対人関係の不安を抱えていた楳本さんは、市内の福祉作業所に通うことをきっかけに絵画と出合った。数式から発想したという作品は、緻密なタッチと独特の色使いで高い評価を受けてきた。関係者は「独創的な作品と彼のメッセージを知ってほしい」と話す。
絵や仲間との出会いが活力に
市内出身の楳本さん。学生時代、人間関係に悩まされ、人と接することへの苦手意識を抱えていた。そんな楳本さんが市内小町のNPO法人「道」が運営する道工房へ通い始めたのは4年前。絵画などの創作活動を通じて、さまざまな障害などを持つ人の社会復帰を支援する作業所で、日本画や銅版画、陶芸などの制作を行うようになった。
苦しいことも「描いているときは忘れられる」と創作に打ち込むようになった楳本さん。その作品はユニークだ。絵を指導する須田みどりさんは「彼は学生時代、鳥人間コンテストに参加した理数系。最初に数式が頭に浮かぶようで、絵にする前に書き出していました」と話す。
その緻密なタッチと鮮やかな色使いは、講師陣だけでなく外部でも評価されるようになり、2018年には鎌倉市展で優秀賞も受賞した。
またスタッフや通所者との交流を通じて、人と接する不安も克服していった。「作品の通り、明るくて皆を笑わせてくれた」「大きな笑い声も懐かしい」と話すのは、楳本さんと親しかった工房の仲間・村田恭一さんと加田龍紀さんだ。「仲間のおかげで見違えるように元気になった。販売の仕事にも挑戦し、就職活動も始めていた」と岩立実勇理事長は振り返る。
しかし、そんな矢先の昨年2月、楳本さんは体調を崩し、急逝する。42歳だった。
楳本さんがよく口にしていたのが、「みんなに幸せになってほしい」という言葉。岩立さんは「苦しみを抱えていた彼なりのメッセージも添えられている。ぜひ足を運んで感じてもらえたら」と話す。
水曜休廊。午前11時〜午後5時。(問)道工房【電話】0467・23・8772
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