鎌倉の海岸に流れ着く海藻を飼料に利用して、新たなブランド豚の育成を目指す取り組みがこのほど、農林水産省から「6次産業化・事業化計画」の認定を受けた。市内在住の料理研究家らが中心となって進めており、水産資源の有効活用や障害者の所得増加にもつながる仕組みが高い評価を受ける。関係者は「鎌倉から新たな食の文化として発信していきたい」と話す。
「6次産業化」とは生産(1次)から加工(2次)、販売(3次)までを事業者が手掛けることで新たな付加価値を生むことを目指すもの。農林水産省では優れた事業計画の認定を進めている。
鎌倉発ブランド豚
今回認定を受けたのは「鎌倉海藻ポーク」の生産・加工・販売事業。市内岡本で料理教室「鎌倉ダイニング」を主宰する矢野ふき子さんと、厚木市を拠点とする畜産事業者「臼井農産」(臼井欽一社長)が中心となって進めている。
その仕組みは、鎌倉の海岸に漂着する海藻を混ぜた飼料を豚に与えることで、新たなブランド豚の育成を目指すもの。
鎌倉の海岸に漂着する海藻は年間3千トンともいわれるが、市場価値がほとんどないため、利用されていないという。
そこで矢野さんらは、海藻の回収と加工を障害のある人が通う福祉作業所に依頼。鎌倉漁業協同組合とも連携することで、水産資源の有効活用と障害者の収入増を一度に実現する「水福連携」を目指している。
2018年秋から海藻を混ぜた飼料を与えた豚の育成が始まっており、脂の口どけが良く低脂肪で、オレイン酸の含有量が多くなるなどの特徴が出ているという。
昨年10月には臼井農産が市内岡本に販売所を設置。現在は注文に応じて通信販売を行っている。
2月27日には市内で認定証授与式が行われ、農林水産省関東農政局神奈川支局の坂本里美支局長は「この取り組みは関わる全ての人が幸せになれる。ぜひ広げていってほしい」とあいさつ。
臼井さんは「わずか1年半でここまでこぎつけることができたのは皆さんのおかげ。現在、鎌倉海藻ポークとして販売できるのは月に数頭程度だが、今後は生産量を増やして飲食店やホテルなどにも納入したい。品質の良い肉を鎌倉、そして全国の人に味わってもらえるように努力したい」と話し、矢野さんは「ゆくゆくはふるさと納税の返礼品や給食にも採用してもらえるようにがんばりたい。新しい食文化として鎌倉から発信していきたい」と意気込んだ。
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