湘南鎌倉総合病院(市内岡本、篠崎伸明院長)では、新型コロナウイルスの感染拡大初期から、患者を受け入れてきた。神奈川県が進める「神奈川モデル」構築のため、中等症患者を受け入れる専門病棟の運営も受託するなど、今も医療の最前線でウイルスの脅威と対峙し続けている。同院で院長代行を務める小林修三医師に聞いた。
――横浜港に入港したクルーズ船など、早くから新型コロナウイルスの陽性患者を受け入れてきた湘南鎌倉総合病院ですが、これまで院内感染などは発生していません。どのような取り組みを進めてきたのでしょうか。
「まず私たちが取り組んだのは早急に陽性患者を見つけ出すこと、そして見つかったら分ける、という2つです。感染拡大が明らかになってきた2月中旬の時点で院内にはPCR検査のための機械が2台ありました。まずはこれを3台にして、検査技師も2人から8人へと増員しました。また3月の初めには院外にプレハブの『発熱外来』を開設し、熱のある方はまずそちらに行っていただくことにしました。そしてLAMP法と呼ばれるPCRも組み合わせながら、数時間で結果が出るような体制を作りました。また、病棟1棟を陽性患者さん専門として用意するとともに、疑いのある方も含めて、ゾーニングしてスタッフの接触時間、機会を限定して対処してきました。こうした体制を早期に作ったことで、いまに至る5カ月間、院内での感染者はゼロですし、職員からの発生もありません」
――現状のPCR検査の体制は。
「今は2時間おきに1日中検査を実施しており、早ければ約1時間で結果が出ます。もし外部の検査機関にお願いしていたら、今でも3日はかかります。とにかく院内ですみやかに検査できる状況だったことが良かったと思います」
――しばらく続く「コロナ時代」をどのようにとらえていますか。
「先日印象的な出来事がありました。ある90代の男性が来院し診察の結果、1週間ほどの入院が必要だと伝えました。すると『こんな時に入院したら妻にも会えずに死ぬことになる。もう十分生きたから治療はいい』と言うんです。私はこれを聞いて大変ショックを受けました。確かに感染拡大を防ぐことは大切です。しかしそのために誰にも見舞いに来てもらえないまま治療を受け、もし亡くなるようなことがあったら、それを本当の医療と言えるのだろうかと。結局、一定の管理された状況でご家族との面会を約束して入院してもらいました。この経験を通じて改めて感じたのは、医療というのは一人ひとりの心に寄り添うべきものだということです。数学や物理といったサイエンスだけではなくて、哲学や文学、音楽のようなアートと、ヒューマニティをベースにしないとだめだと痛感したのです。『withコロナ』と呼ばれる時代、医療人は原点に立ち返って考えろ、と言われているように感じています」
――感染者が再び増加して「第二波」への不安が強まっています。
「県が湘南アイパークの敷地内に開設し、当院が運営を受託している180床の中等症患者専門病床も一時期はほとんど患者さんがいませんでしたが、現在は徐々に増えていて『第二波』が近づいているといってもよい状況です。ただ、皆さんにお伝えしたいのは、『正しく恐れる』ことの大切さです。感染が収束するには今後2〜3年かかるかもしれません。その間、家から一歩も出なければ感染のリスクはなくなりますが、それが本当に人間らしい生活と言えるでしょうか。今は大勢で集まることは無理でも、普段から手洗いやうがいといった感染予防を徹底したうえで、良い音楽を聴きに行ったり、美術作品を見に行く、たくさん本を読むのも良いですし、まずは家から出て青空を眺めたり気持ちの良い風に吹かれて下さい。そうした生活を送れば、自然免疫力も上がるはずですからね」
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