(公財)角川文化振興財団が主催し、短歌界で最高の栄誉とも言われる「迢空(ちょうくう)賞」が4月21日に発表され、瑞泉寺(二階堂)の住職で、歌人としても活動する大下一真さん(73)の歌集『漆桶(しっつう)』が選ばれた。大下さんは「ひっそりと活動していたら、このような賞を頂いちゃった。光栄です」と、驚きと喜びが交錯した。
歌人の釈迢空氏にちなんで設立された迢空賞は、前年1月から12月に刊行された歌集が対象。今年で56回目を迎え、前回は俵万智さんが同賞を受賞している。
「未熟な僧」という意味を込めた漆桶は、大下さんにとって7冊目の短歌集。この5年間、日常で感じるちょっとした驚きを詠んだ400超の短歌をまとめ、自身の誕生日だった2021年7月2日に刊行していた。
和尚の日常作品で表現
「花びらを踏みて咲きたることを知る 白き山茶花墓所掃きに来て」
漆桶に収められた一首。11月のある朝、瑞泉寺の庭を清掃中だった大下さんが花びらを踏んだことにより、高い場所に咲くサザンカが開花していたことに気づいたという1シーンを詠った。「白」は寒さ、冬の訪れも表現している。この一首のように、大下さんの作品には和尚の日常を表現したものが多い。
受賞時に、「私なんかが頂いてもいいのかな」と謙遜した大下さんだが、短歌に触れてから半世紀が経つ。文学少年は石川啄木などの歌人に憧れた。瑞泉寺の住職に就いてからも創作活動を続け、歌集を出版。鎌倉市内の歌人によって構成する「鎌倉歌壇」にも加わり、現在は会長を務めている。また、地域貢献団体「鎌倉同人会」の副理事長としても文化振興に傾注。歌詠みを通して、今後も街の発展に寄与したい考えだ。
「日常の生活を大事にして、その中の喜怒哀楽を短歌で表現していきたい」(大下さん)
過去の迢空賞では、第1回で鎌倉の歌人・吉野秀雄さんが受賞。偶然にも瑞泉寺で毎年、吉野さんを偲ぶ行事が開かれている。第33回では、鎌倉同人会の尾崎左永子さんも賞に輝いている。
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