福祉センターの2階奥にひっそりと開院するとある病院――。訪れる患者は、足の折れた「犬」に、窓の割れた「バス」、踊れなくなった「サンタ」たち。「なおせますか」と心配する声に「まずは診てみましょう」と答えるのは、20周年を迎えた「おもちゃ病院かまくら」のドクターだ。
おもちゃ病院は、その名の通り、壊れたおもちゃを修理する病院で、部品代などの実費のみで原則無料での「治療」をしている。所属するドクターは、経歴もさまざまなボランティアたち。「船の修理をしていたとか、自衛隊でヘリを扱っていたとか、工芸品やおもちゃに詳しい人もいるね」と話すのは、宝飾関係の仕事をしていたという4代目代表の大嶋武志さん(75)だ。
鎌倉では、1999年に個人の活動として始まり、3年後に会を発足。現在のメンバーは19人。中には20年間続けている80代ドクターも。最近、30代が入会し、平均年齢は「グッと下がって65歳ほど」になったと笑う。
6月18日、あるドクターが「無事なおった、大手術だったよ」とうれしそうに手にしていたのは、歩いたり鳴いたりする犬のおもちゃ。「遊ぶ時に体重をかけちゃうと足が骨折するんだよ。同じ遊び方をするとまた折れちゃうから、直すだけじゃなくて補強もした」と気配りも欠かさない。
「壊れ方も分かりやすいものから、中を開けてみないと分からないものまでさまざま。本当の病院の内科、外科のようなもの」と大嶋代表。それぞれ、得意な分野の治療にあたったり、困った時には互いに知恵を出し合ったりと、ドクター自身が楽しんでいることが20年続いた要因の1つと大嶋代表は話す。
「直れば子ども、親、修理した人もうれしい。喜ぶ顔が直接見えるのもやりがいがある」。その言葉の通り、おもちゃの受け取りに来た親子とドクターの顔には、笑みが浮かんでいた。
年間500件→100件
例年は、年間400〜500件、開院時間から行列ができるほどだったというが、コロナ下では休院も多く、昨年は短時間で予約制にし、100件にとどまった。
今年4月、御成町の福祉センター(第1水曜日・第3土曜日)と笛田リサイクルセンター(第4火曜日)での診療を再開したものの、来院者は以前ほどまでは戻っていないという。「まだまだ受付可能です。大切に直させていただきます」と呼びかける。受付時間は両会場とも、午前10時から午後2時まで。詳細はウェブサイトでも掲載中。(問)大嶋代表【携帯電話】090・8885・1119
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