鎌倉生まれの『「じぶん」のはなし』
鎌倉で生まれ育った”虫好き”の2人による絵本『「じぶん」のはなし』が、話題となっている。市内在住の解剖学者・養老孟司さん(84)が作ったストーリーに、画家の横山寛多さん(42)がイラストを添えた。「もっと自然に親しんでほしい」と語る両者に、今作への思いを聞いた。
ベストセラー『バカの壁』などを執筆してきた養老さんにとって、絵本は初挑戦だ。「自分からやりたいとは言いませんが、出版社が企画を持ってきたので抵抗はしないことにしました」と笑って切り出す。
かつて、養老さんが日本記念日協会に申請し登録された「虫の日(6月4日)」に発売となった『「じぶん」のはなし』。同作では、「養老先生」が子どもたちを連れて昆虫採集に出かけるというストーリーの中に、養老さんの自然や人へのまなざし、子どもたちに伝えたいエッセンスが凝縮されている。
「みんなも、たまごだったんだよ。とりやさかなやむしとおなじだね」--。作中の養老先生は子どもたちにこう問いかけ、人と自然や生きものの関わりについて読者が考えを巡らす一冊となっている。「生きる上で根本的に何が必要なのか。自分で考えて、判断してもらえればいい」(養老さん)
のびのびとしたタッチの絵で、雑誌や広告のイラストも手がける横山さん。養老さんとは、4年ほど前に開かれた子ども向けの昆虫観察会で出会った。
今回の絵本では、養老さんの文章をもとにアイデアを練った。「わりとすぐにイメージが湧きました。最初の打ち合わせで絵を描いて持っていくと、養老先生が『いいんじゃないか』と」(横山さん)。幼少期から鎌倉で自然や生きものと触れ合ってきた両者の”感覚”が、36ページに詰め込まれている。昔と変わらず、今でも大好きな昆虫を追いかける2人の絵本は、子どもだけでなく大人までもが「人生を楽しむヒントにもなる」と好評だ。
「入れるだけでなく外へ出さないと」
絵本デビューとなった養老さんは、最近の子どもたちについて気になることを挙げる。「今は情報が脳に入るばかりで、出すことがほとんどない。入ってきたものを中でぐるぐる計算して外へ出るのが教育。そうすると、計算が成熟していくんですよ」。横山さんと次の虫捕りの計画を練りながら、こう続けた。「子どもは動くことで脳が育つ。山へ行って虫を捕まえたり、絵を描いたり、大声を出してもいいですね」
■「じぶん」のはなし(講談社・税込1760円)、全国の書店などで発売中
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