新型コロナの感染拡大により、介護事業者から悲鳴があがっている。第7波によって、クラスターも相次いで発生。神奈川県が公表する県内全域の新規クラスター発生動向によれば、直近のピークとなった8月2〜8日は、199件のうち、介護・福祉事業者が7割を超えた。積極的疫学調査の優先対象が医療機関や高齢者施設だったり、学校が夏休みだったりという背景もあるが、介護事業者の施設運営や事業経営に支障をきたす事態となっている。
「仕事がまわらなかった」。市内今泉台でデイサービス(通所介護)の「ケアサロンさくら」を経営する稲田秀樹代表(61)は、 8月前半をこう振り返る。
2年前からまん延する新型コロナだが、感染対策に注意を払ってきたケアサロンさくらでは、7月までに陽性者が出ていなかった。しかし第7波が続く8月に入ると、無症状の利用者から感染が広がった。聞けば、さくらの利用者が通う他の施設でも同時期にクラスターが起きていた。「知り合いのケアマネージャーと連絡を取ると、感染者が出ていないところが珍しいくらいだと言われた」(稲田代表)。利用者の感染は4人に抑えられたものの、入浴や排せつなどの介助にあたる職員の間でも感染が広がり、10人中8人が後を追うように感染した。
8月4〜11日の8日間はサービスを停止。12〜17日も出勤できるスタッフが少なく1日の利用者受け入れを通常の半数に制限した。さくらへ通所できず、自宅で妻に付き添った80代男性はこう語る。「食事やトイレなど私がずっと付きっきりだった」。また、普段はさくらで入浴介助を受けており、「自分で入れるのは自信がなく、怖かった」と断念したという。
入居型のある高齢者施設でも8月中旬に感染が爆発し、35人規模のクラスターに。施設で暮らす入所者が軽症ならそのまま様子を見ていたが、「職員が感染で減り、1人の仕事量が大幅に増えた」(施設運営者)。
業界全体の底上げ不可欠
神奈川県のクラスター対策班では、検査チームの派遣や物資支援、相談対応などを行い、介護士派遣による人的支援も掲げている。ただし、「各所で感染が拡大すると派遣が難しくなってくる」と担当者は話す。
施設運営もそうだが、感染によって事業者の経営にも影響が及ぶ。デイサービスなら、通所者を受け入れられなければ収入はない。さくらではクラスター直後の休止や利用制限により、8月は40%ほどの減収となった。稲田代表は、「感染を広げないために閉めても休業補償はない。今回のようなことが2回も3回もあったら本当に困る」と不安を募らせる。
また有事の人的支援についても介護現場では専門知識が求められ、「介護業界は慢性的な人手不足。コロナに限らず、普段から国全体で介護職のイメージ向上や労働環境を整えていく必要がある」と警鐘を鳴らす。
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