鎌倉のとっておき 〈第138回〉 かまくら花めぐり(浄智寺)
浄智寺(山ノ内)は、1281年10代執権・北条師時(もろとき)などが創建した、鎌倉五山第四位の名刹(めいさつ)である。本尊は木造三世仏坐像。過去・現世・未来の三世に渡り、願いを聞き入れてくれるという。惣門近くの「甘露の井」や、二階に花頭窓のある鐘楼門など、見どころも数多い。
ここに咲く花といえば、初春の頃は蝋梅(ろうばい)や水仙。境内には甘い香りが漂う。春が進むにつれ、黄色い三椏(みつまた)や万作も咲き始める。
陽春の頃は桜。境内入口で薄紅色に咲く立彼岸(たちひがん)は、市の天然記念物で、県の名木100選にも選ばれている。この時期には、鐘楼門脇の枝垂桜も咲き始め、春爛漫を迎える。
初夏の頃は白雲木(はくうんぼく)。仏殿横で沢山の白い花を付ける。参道の両脇では射(しゃ)干(が)の花も咲き始める。かたや境内裏の岩陰では、岩煙草(いわたばこ)が薄紫色の可憐な花を咲かせる。そして紫陽花。参道をはじめ其処(そこ)此処(ここ)で、青や薄紅色の花々を咲かせてくれる。
夏から秋にかけては、桔梗(ききょう)をはじめ、萩や彼岸花、紫苑(しおん)などの花々が目を楽しませてくれる。秋も深まると、書院前では、白や青紫色の秋明菊(しゅうめいぎく)が彩を添えてくれる。
初冬の頃は山茶花(さざんか)。花の少ない時期に咲く赤い花は、ひときわ目を引く。そして紅葉(もみじ)。境内はもとより、参道の木々が赤や黄色に色づく光景は、錦絵のごとく美しい。
山ノ内の谷戸に静かに佇(たたず)む浄智寺。鎌倉七福神の布袋様も、にこやかに微笑んでいる。
石塚裕之
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