義務教育を修了できなかった人や、不登校やひきこもりの人、家族の事情で来日したものの日本語がわからない外国籍の人などに対し、国が教育の場を提供しようと全国で設置を進める夜間中学。鎌倉では公立の夜間中学の整備に至ってはいないが、ボランティアによる自主夜間中学「鎌倉えんぴつの会」が2021年4月に発足し、2年が経過した。学習者やスタッフも少しずつ増え、学びの芽が育ちつつある。
土曜午後、鎌倉市福祉センターの一室では、学習者と元教諭などの教育現場経験者がそれぞれの学びを育む。4月15日も3人の学習者が別々のテーブルに別れ、スタッフたちが「先生」となる。「生徒」の高校生は英語の文法を習い、20代男性は漢字の読み書きに挑戦するなど、学習者に合わせた学びが展開される。受講料は無料だ。
15日の参加者の1人、米国出身のダイアナさんは鎌倉の自主夜間中学の学習者第1号でもある。日本の大学で英語を教える一方、自主夜間中学では日本語を学ぶ。教科書は、吉本ばなな著の小説『キッチン』。ダイアナさんが朗読しながら、理解できない言葉や文章をスタッフが丁寧に教える。ダイアナさんは、「日本社会や文化を感じるのに小説はいい」と笑顔をのぞかせる。
日本で働くようになったダイアナさんは、自身が暮らす国の言葉を習得したいと自主夜間中学に入会。この2年で、周囲も驚く上達ぶり。「日本語がわかるようになると、日本での生活も楽しくなった」
自主夜間中学の鎌倉えんぴつの会は、材木座在住で、日本語教師の関美江子さんが立ち上げた。2016年に「教育機会確保法」が成立し、すべての国民や日本に暮らす外国人などに教育の場を提供するよう、公立の夜間中学が全国に整備され始めた。
しかし公立の設置は限られ、県内ではこれまでに横浜、川崎、相模原の3カ所。そこで、かつて東京の自主夜間中学に携わった経験から、関さんら有志が自主的に開講した。ボランティアによるえんぴつの会は、海老名や厚木などでも組織されている。
学習者のペースに合わせ
鎌倉では学習者ゼロという状態からスタートし、2年間で学習者が6人、スタッフは14人に増えた。学習者の年齢や国籍はさまざまだ。関さんは「事情によってこれまで十分に学べなかった人、現在学校に行くことができていない人、それぞれにわかるところからわかるように教えていきます」と語る。鎌倉えんぴつの会を知ってもらおうと、4月上旬にはスタッフの福山瑶子さんが制作した動画をユーチューブ上に公開した。
開講日は、市福祉センターで毎週土曜、横須賀市「衣笠駅徒歩1分図書館」で毎週水曜など。学習者、スタッフは随時募集中。(問)関さん【携帯電話】090・6045・3934
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