▼スラムダンクの聖地として人気を博す鎌倉高校前の踏切付近は今、コップの水が溢れんばかりの状態だ。昨年12月の映画公開や入国制限緩和などにより、コロナ下で一時減っていた観光客が再び増加。聖地を写真に収めようと、人だかりのできた歩道に収まりきらず、観光客は次第に車道へとはみ出していく。踏切前の車道中央で堂々とスマホを構える姿も。歩道から人が溢れ、所構わず車道を横断するため、近所にはクラクションが鳴り響く始末だ。
▼踏切周辺は、SNSの普及も追い風に、鎌倉を代表する映えスポットとなった。市内では、原付バイクのオリジナルプレートに景色が採用されるなど地元自慢の一コマである。そんな景色を守るべく、コロナ前から鎌倉市や江ノ電は観光客に対しマナー順守を促してきた。踏切横に設置した看板では、中国語や英語表記で踏切に立ち止まらず、車道に出ないよう訴える。週末には警備員を配置し、交通整理やルール周知に努めている。
▼ただ、過去には観光客が関係する接触事故が起きてしまっていた。現在の踏切付近には、ピークタイムに最大100人近くが滞在し、1人の警備員が対処するのは至難の業だ。警備員不在の平日にも観光客は殺到している。残念ながら、注意喚起の看板に視線を向ける人は限られ、十分に地元の思いが伝わっているとは言い難い。聖地沸騰により、住民は混雑時間を回避して外出したり、頭を下げながら観光客で埋め尽くされた歩道を通行したり。まちの主役が、市民から観光客へとすり替わってしまっているのではないか。
▼観光スポットとして人気が高まったことで、地元の「安心」「安全」なまちづくりへの責任は増す。現状の対策では市民の安全性、住民の安心感が失われかねない状況にある。2019年の市や警察、住民らによる対策会議で、警備員増員、歩道と車道の明確な分離、柵の設置といった具体的なアイデアがあがっていた。聖地で悲しみを生まないためにも、さらなる対策が急務だ。覆水盆に返らず、である。
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