鎌倉のとっておき 〈第157回〉 かまくら花めぐり(青蓮寺)
819年空海(弘法大師)により創建された青蓮寺。本尊の木造弘法大師坐像(鎌倉期)は、両膝の関節などが鎖で結ばれ動くことから「鎖大師(くさりだいし)」と呼ばれ、国の重要文化財に指定されている。
ここに咲く花といえば、早春には梅。鐘楼傍の紅梅をはじめ、本堂前の白梅や枝垂梅が春を告げる。季節が進むと、本堂前の八重桜や参道の枝垂桜が薄紅色の美しい花々を咲かせてくれる。ほどなく、濃桃色の花桃や、木瓜(ぼけ)や躑躅(つつじ)の真っ赤な花々が咲き揃い、境内は春爛漫を迎える。
初夏には藤。二種類の藤が濃紺や淡い赤紫色の花を付ける。この時期、白い仏蘭西菊(ふらんすぎく)や、高野山にも咲く濃桃色の石楠花(しゃくなげ)も咲き始める。参道脇の池では、白や薄桃色の睡蓮も花開く。雨の季節には、石仏前などの紫陽花が鮮やかな青紫色の花を咲かせる。また、参道左には三十年に一度咲くという竜舌蘭(りゅうぜつらん)があり、2019年には花火のような黄色い花を咲かせたという。
秋には秋桜(こすもす)。境内の其処此処(そこここ)で白や薄紅色の花々が秋風にそよぐ。秋も深まると、白い秋明菊(しゅうめいぎく)や薄紅色の十月桜が花を付け、真っ赤な山茶花(さざんか)も彩(いろどり)を添える。初冬には、石蕗(つわぶき)の黄色い花々が楚々として咲く中、紅葉(もみじ)の木々も赤や黄色へと染まっていく。
空海が天女(江島(えのしま)弁財天)から仏舎利を託された翌日、目覚めると青い蓮が一面に咲いていたとの伝承も残る青蓮寺。四季折々の花々が迎えてくれる、ありがたい名刹(めいさつ)である。 石塚裕之
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