鎌倉のとっておき 〈第168回〉 古都の縁(鎌倉と京都)―夢窓疎石の庭園(瑞泉寺と西芳寺、天龍寺)―
二階堂の瑞泉寺は、夢窓疎石が開いた臨済宗(円覚寺派)のお寺で、鎌倉公方の菩提寺として栄え、関東十刹第一位の格式を誇った名刹である。1327年(嘉暦2年)、幕府の御家人二階堂道蘊(貞藤)が夢窓疎石のために建立した瑞泉院に始まるといわれ、初代鎌倉公方の足利基氏が中興して瑞泉寺とした。
瑞泉寺は「花の寺」として知られ、四季それぞれに境内に美しい花が咲く。スイセンに始まり、市指定天然記念物のオウバイをはじめ、各種の梅が楽しめる。その後、サクラ、アジサイ、フヨウの花と続く。また境内には紅葉の名所「紅葉ヶ谷」があり、秋には紅葉狩りを楽しめる。
瑞泉寺の仏殿背後には国の名勝に指定されている庭園がある。この庭園は、1970年(昭和45年)から翌年の発掘調査によって復元されたもので、岩盤をくり抜いた岩の庭は夢窓疎石の作庭である。岩盤の正面には水月観の道場としての「天女洞」が、東側には坐禅のための「坐禅窟」が掘られている。前面の貯清池には島が設けられ、橋が架けられている。この橋を渡り岩壁に設けられた十八曲と呼ばれる登山路の上には、かつて夢窓疎石が建てたという偏界一覧亭があり、五山文学の中心地であった。
夢窓疎石は瑞泉寺庭園を作庭した後、京都に西芳寺(苔寺)庭園、天龍寺庭園を作庭する。「岩庭」と呼ぶべきこの瑞泉寺庭園は書院庭園のさきがけをなすもので、世界遺産の西芳寺、天龍寺の庭園の原点と思うととても興味深い。 山東直大
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