鎌倉のとっておき 〈第170回〉 かまくら花めぐり(長谷寺:初春から)
736年奈良時代の創建と伝わる長谷寺。本尊は、木造では日本最大級の十一面観音菩薩像(9・18m)。また源頼朝縁(ゆかり)の阿弥陀如来坐像や、鎌倉七福神の大黒天なども祀られる中、境内では、優しく微笑む和み地蔵や良縁地蔵が人気を博している。
ここに咲く花といえば、初春には梅。山門前の白梅をはじめ、下境内の白い冬至梅(とうじばい)や、紅色も鮮やかな紅千鳥(べにちどり)が春の訪れを告げる。山門近くや上境内では、八重の素心蝋梅(そしんろうばい)なども甘く香り始める。そして椿。弁天窟周辺では、一重の紅侘助(べにわびすけ)や白侘助(しろわびすけ)が、また眺望散策路では、八重の平寒椿(ひらかんつばき)が赤く咲く。
立春の頃には、妙智池(みょうちいけ)周辺で薄紅色の河津桜や黄色い山茱萸(さんしゅゆ)が咲き始める。また放生池(ほうじょういけ)周辺では、福寿草や水芭蕉にも似た白い海芋(かいう)も咲き始める。かたや緑陰(りょくいん)の庭では、花桃が濃桃色の花を付ける。また下境内と上境内の間、地蔵堂へ続く路沿いでは、雪割草が白や薄桃色の可憐な花を咲かせてくれる。さらに鐘楼近くでは、深紅の寒緋桜(かんひざくら)もほころび始める。 弥生三月、和み地蔵の隣で吉野躑躅(よしのつつじ)が薄桃色の花を付けると、弁天堂傍では黄色い日向水木(ひゅうがみずき)の花々も咲き始める。また地蔵堂へ続く路沿いでは、茶花としても親しまれる貝母(ばいも)が、楚々とした薄黄色の花を咲かせてくれる。そして海光庵前の辛夷(こぶし)が白い花を咲かせる頃には、その傍らで馬酔木(あせび)も白く鈴なりの花を付ける。
石塚裕之
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