鎌倉のとっておき 〈第171回〉 足利尊氏ゆかりの寺院(長壽寺、覚園寺)
足利氏というと室町幕府を開いた初代将軍の足利尊氏、室町幕府の最盛期を築き金閣を建てた第3代将軍の足利義満、あるいは銀閣を建てた第8代将軍の足利義政を思い浮かべる方が多いと思われるが、足利氏は源義家の子孫であり、清和源氏の流れを汲む下野国(栃木県足利市付近)を拠点とする鎌倉幕府の有力な御家人であった。
足利尊氏から遡ること6代前の足利義兼は早い段階で源頼朝に従い、頼朝の重臣として高い地位にあったと言われ、また鎌倉五山第五位の浄妙寺の開基である。金沢街道(六浦路)の浄明寺地区には、足利義兼が邸を構えて以来、足利氏の嫡流・鎌倉公方の居館があり、現在はそれを示す石碑が立っている。
足利尊氏が開いた寺院としては、京都五山第一位の天龍寺、足利将軍家の菩提寺である等持院が有名であるが、鎌倉にも足利尊氏ゆかりの寺院がある。山ノ内にある建長寺境外塔頭の長壽寺は足利尊氏が開基で、息子の鎌倉公方足利基氏が父の菩提を弔うために七堂伽藍を建立したと言われている。足利尊氏が京都では「等持院殿」、関東では「長壽寺殿」と言われる由縁である。長壽寺は季節限定で週末にだけ公開される隠れ家的な寺院で、紅葉の季節が素晴らしい。境内では足利尊氏の遺髪を埋めたと伝えられる五輪塔を見ることができる。また、二階堂にある覚園寺の薬師堂には足利尊氏が書いたとされる棟札がある。
源氏のまち鎌倉で、足利氏ゆかりの場所を訪ねてみるのもおもしろい。
山東直大
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