鎌倉のとっておき 〈第172回〉 かまくら花めぐり(長谷寺:陽春から)
陽春の頃は桜。眺望散策路の山桜が白い花を咲かせる頃、さくら広場では、枝ぶりも見事な染井吉野や枝垂桜が花開き、境内は春本番を迎える。海光庵近くで三葉躑躅(みつばつつじ)が明るい紫色の花を咲かせると、清浄池(しょうじょういけ)周辺などの石楠花(しゃくなげ)も桃色や紫色の花を付け、境内に彩(いろどり)を添える。かたや地蔵堂へ続く路沿いや緑陰(りょくいん)の庭では、碇草(いかりそう)が紫色の清楚な花々を咲かせてくれる。
初夏の頃は菖蒲(しょうぶ)。妙智池(みょうちいけ)や放生池(ほうじょういけ)周辺で青や紫の花々が咲き揃う。特に花筏(はないかだ)に乗った花々は、庭園に落ち着いた和の雰囲気を醸し出してくれる。また妙智池周辺では、白い源平小菊(げんぺいこぎく)や、淡いピンクの昼咲月見草(ひるざきつきみそう)が可憐に咲く。さらに大黒堂周辺では、白雲木(はくうんぼく)や匂蕃茉莉(においばんまつり)が白や薄紫からなる沢山の花を付ける。そして書院周辺では、赤い牡丹(ぼたん)や桃色の芍薬(しゃくやく)が競うように咲き、境内は賑やかさを増していく。また白めだかの池では、赤紫色の睡蓮や花期の長い黄色の浅沙(あさざ)が目を楽しませてくれる。
雨の季節が近づくと、地蔵堂へ続く路沿いでは、その岩陰などで紫色の岩煙草(いわたばこ)が密やかに咲く。また海光庵周辺では、淡い黄色の招霊木(おがたまのき)がほんのりと香り始める。そして紫陽花。全山が赤や紫など多彩な花々で飾られる。特に眺望散策路は、40種以上、約2500株の花々で彩られ、ここから望む鎌倉の青い海と紫陽花とが織りなす美しい光景は、訪れる人々の心を癒してくれる。
石塚裕之
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