鎌倉のとっておき 〈第175回〉 古都の縁(鎌倉と京都) ―一条恵観ゆかりの場所―
金沢街道を東へ行き、浄明寺バス停を少し過ぎた右手に一条恵観山荘がある。一条恵観山荘は、後陽成天皇の第九皇子であり江戸初期に摂政・関白を務めた一条恵観(昭良)が京都・西加茂に建てた山荘を昭和34年(1959)に鎌倉に移築したもので、昭和39年(1964)に国の重要文化財に指定されている。
一条恵観山荘は、往時は一条家の別邸の離れであった。田舎家風の建物は恵観自身が設計したもので、「茶関白」といわれた恵観はこの山荘で茶会を開いたとの記録が残されている。同時代の山荘としては桂離宮、修学院離宮を挙げることができるが、桂離宮を建てた八条宮智仁親王は恵観の叔父にあたり、修学院離宮を建てた後水尾上皇は恵観の兄にあたる。
一条恵観山荘は、御幸門をくぐると茅葺屋根の田舎家風の建物が現れる。金森宗和好みの枯山水がある。赤松・苔・紅葉の京都風庭園はどこから見ても美しい。そして、岩の上をなめるように流れる滑川が庭園から眺められ、風情を醸し出す。武家のまち鎌倉にあって、江戸初期の朝廷文化の一端を感じられる場所である。
京都でも一条恵観を偲べる場所がある。東福寺の塔頭芬陀院(ふんだいん)に恵観ゆかりの茶室「図南亭」があり、露地には勾玉の手水鉢、屑屋型石燈籠がある。「図南亭」は恵観が創建した茶室であり、恵観の三百回忌にあたり芬陀院に再建されたものである。
鎌倉で、そして京都で、一条恵観の世界に触れてみるのも面白い。
山東直大
|
|
|
|
|
|