鎌倉のとっておき 〈第180回〉 かまくら花めぐり(建長寺:夏から)
雨の季節には紫陽花。三門(山門)前や半僧坊(はんそうぼう)への参道など境内の其処此処(そこここ)で、姫紫陽花や額紫陽花が薄紅色や青紫色へと染まっていく。盛夏の頃には、唐門周辺などに並んだ蓮鉢で、凛とした立ち姿の紅白の蓮が照り輝く。かたや法堂(はっとう)横では、桔梗(ききょう)が青紫色の清楚な花を咲かせてくれる。
初秋の頃は萩。特に妙高院前などでは、大きな枝垂れの塊となって咲き、見ごたえも十分である。季節が進み、三門横の金木犀(きんもくせい)から秋の甘い香りが漂い始めると、法堂横などで白や薄紅色の山茶花(さざんか)もほころび始める。さらに天源院(てんげんいん)周辺などでは、黄色い石蕗(つわぶき)の花々が境内に彩を添える。
初冬の頃は銀杏(いちょう)。半僧坊へと続く参道の木々が黄色く染まっていく。そして紅葉(もみじ)。全山の紅葉が赤や黄色に色づく。特に高低差のある半僧坊周辺では、斜面地特有の紅葉(こうよう)のグラデーションを楽しむことができる。また虫塚周辺では、竹林の緑と紅葉の赤とが鮮やかなコントラストを見せてくれる。やがて銀杏や紅葉(もみじ)の数多(あまた)の落ち葉は、半僧坊周辺の参道を赤と黄が織りなす錦の絨毯へと染め上げていく。
またこの時期、半僧坊から鎌倉アルプスへと続く天園ハイキングコースを辿れば、眼下には錦秋に染まる鎌倉の山々と、光り輝く相模灘との絶景を目にすることができる。
けんちん汁(建長汁)などの精進料理をはじめ、日本の禅宗文化発祥の地ともいわれる建長寺。日本が世界に誇る鎌倉の名刹(めいさつ)である。
石塚裕之
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