歴史的建築物の活用法として注目
鎌倉駅西口から徒歩5分、扇ガ谷の高台にある洋館「古我邸」がこのほど、フレンチレストラン・結婚式場に姿を変え、オープンした。歴史的建築物活用の新たな手法としても注目を集める同施設。運営を手がける地元企業の関係者は「市民の皆さんが気軽に立ち寄れる場所になれば。ゆくゆくは地域活性化の拠点にしたい」と意気込む。
鎌倉の「三大洋館」
古我邸は1916年、三菱合資会社の専務理事だった荘清次郎の別荘として完成した。戦前は濱口雄幸、近衛文麿ら総理大臣が別荘として利用し、前田邸(鎌倉文学館)、華頂宮邸とともに「鎌倉三大洋館」の一つと言われる。
今回、古我邸の再生・活用に取り組んだのが「(株)ビーノート」(由比ガ浜)だ。社長の新井達夫さんは、もともとホテルやレジャー施設の建設・運営を手掛ける大手企業のサラリーマン。飲食・ブライダル事業に携わるきっかけは、会社が建設した結婚式場の支配人を任されたことという。「3年で10キロ痩せました」と、慣れない仕事に戸惑ったが、新郎新婦の「晴れの日」をスタッフ一丸となって作り上げる日々は「すごく充実していた」という。
20年近く勤めた会社を辞め2009年に独立。拠点を由比ガ浜に置いた。
「地域活性の拠点に」
所有者からの打診もあり、古我邸活用の話が動き出したのは今から2年ほど前。「素晴らしいロケーションと歴史を感じさせる洋館。どうしてもこの場所で事業がやりたい」と惚れ込んだ。
しかし「全部がダメからのスタート」と振り返るように、商業施設として利用するために必要な建物の用途変更や資金調達など、当初は課題が山積していた。
それでも新井さんの事業にかける思いがぶれることはなかった。懸案だった資金面は、鎌倉商工会議所の仲介で、湘南信用金庫と日本政策金融公庫による協調融資という珍しいスキームでの調達に成功。昨年末からリノベーションにとりかかった。
4月17日、フレンチレストランとして新たな一歩を踏み出した古我邸。「ランチは1カ月先まで」予約が入っているほか、先月だけで2組のカップルが結婚式を挙げるなど、まずは順調なスタートを切った。
新井さんは「カフェも併設しているので、市民の皆さんが、散歩のついでなどに寄ってもらえる場所になればうれしい。ゆくゆくは周辺の古民家を活用し、観光、飲食、ブライダルと宿泊を組み合わせたプランなども用意したい」と地域活性の新たな構想も思い描く。
その成否は、一企業だけでなく、鎌倉の観光事業の新たな可能性を切り開くことにもなりそうだ。
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