鎌倉のとっておき 〈第79回〉 護良親王の兜
昨年、上野にある東京国立博物館に重要文化財「紅糸威星兜」(文化庁蔵)が展示されているというので行ってきました。
本館2階「武士の装い」の部屋にあったこの兜。入れ替えがあるので、いつも展示されているわけではないという。説明板には、護良親王の兜として伝わっていることが記されていました。
左右に鍬形、中央に利剣を配した三鍬形の前立てであることが、兜の特徴の一つ。三鍬形といえば、皇居前広場にある銅像、騎馬姿の楠木正成が被っている兜の前立てもこれに当てはまります。
楠木正成像の作者である高村光雲が「幕末維新懐古談」に銅像を製作する経緯を詳しく書いています。それによると、歴史画家の川崎千虎氏が楠木正成の遺品を調査。兜は信貴山の宝物になっているものが楠木正成のものとして有力ですが、その兜には前立てがありませんでした。しかし、同時代の大塔宮護良親王の兜の前立てが、楠木正成の兜の前立てと同様であろうという結論になったことから、親王の兜と同じ三鍬形の前立てにしたということです。
鎌倉宮のご祭神である護良親王は、出陣の時に、獅子頭を兜に忍ばせ身を守ったと伝えられています。そのため、鎌倉宮では獅子頭のお守りを受けることができます。護良親王は、紅糸威星兜にも獅子頭を忍ばせ出陣したのでしょう。
三品利郎
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