寺院や公園、緑地など市内各地で生息が確認されているタイワンリス(日本名・クリハラリス)。かわいらしい見た目と、餌を両手に持って食べる様子から、観光客が写真に収める姿も見られる。一方で、果実を食べたり、電線をかじったりする被害が後を絶たず、国の特定外来生物に指定されている。増加するタイワンリスの被害とその対策について、鎌倉の現状を追った。
「かじりかけの果実は食べずに、もうすぐ食べ頃のものを軒並み食べられてしまう」(十二所・60代女性)。「いつの間にか家の敷地に入り込み農作物を荒らしていく」(扇ガ谷・50代男性)
タイワンリスによる主な被害は、みかんや柚子などの果実への食害や、樹皮剥ぎ、電線をかじるなど。国によると、タイワンリスは1930年以降にペットや動物園などで飼育されていた個体が、逃げ出したり放たれたりしたことにより野生化。全国各地に生息地を広げ、現在は神奈川のほかに静岡県や岐阜県、大阪府、長崎県などで点在している。
繁殖力が高く、個体数が増加したことで生活環境への被害に留まらず、生態系への深刻な影響が懸念される。国はタイワンリスを外来生物法による特定外来生物に指定。鎌倉市でも、2009年度にタイワンリス防除実施計画を策定し、市民らへ捕獲器の貸し出しを実施。捕獲後の個体は市が回収し、処分している。
3年連続で千頭超
市内でのタイワンリスの捕獲数は、直近15年で約4倍に増加。5年前には過去最多の1571頭を記録し、翌年に一旦減少するも、以降は3年連続で千頭を超えている。市環境部は、「これまで果実や種子の豊作が隔年で続き、それに合わせて人里にも姿を現していた。しかし減少予想の今年は、酷暑の影響で山林の餌が少ないため、人里に多く出現している」と話す。今年の捕獲数は、8月末時点ですでに800頭超。実際の生息数は、捕獲数の10〜15倍とも言われている。
市が追加対策検討
市が現在実施している対策は、捕獲器の貸し出しのみで、住民の生活環境を守ることを目的としている。50代男性は「民有地に対して市が直接対応する必要があるのでは」と訴える。
熊本県の宇土半島では、宇土市と宇城市が連携し、1頭800円の報奨金制度を設定。民間の猟友会員や農家に対して集中的な捕獲を促し、約10年間で6千頭超を捕獲し、生息数の減少に成功した。
鎌倉市も現状を踏まえ、来年度以降に検討しているのが、環境省の特定外来生物防除等対策事業の補助金活用だ。捕獲に関する予算は、これまで市が全額負担していたが、事業内容の改正に伴い、タイワンリスも予算の対象となった。さらなる対策を視野に入れる市環境部は、「県や大学と連携しながら生息分析を行い、場所を絞って重点的に捕獲することなどを検討していきたい」と話す。
鎌倉版のローカルニュース最新6件
「人類とともに1万年〜♪」9月20日 |
|
|
|
|
|