読書の秋。本と出会える場所と言うと、書店や図書館を思い浮かべる人が多いだろう。実は、鎌倉の街角にも本が並ぶ場所がある。その1つが鎌倉市農協連即売所(レンバイ)そばに店を構える「朝食屋COBAKABA(コバカバ)」(小町)だ。店の外には木製の本箱があり、地元の人や観光客が時折中をのぞいていく。
本箱の名は「みんなのほんばこ」。30冊ほど入る小さなもので、小説に図鑑、専門書など、さまざまな本が並ぶ。自由に箱を開けて本を借り、読み終わったら返す。寄贈も受け付け中だ。
この本箱、鎌倉市内では1カ所のみだが、実は葉山町には30カ所もある。元々は葉山町の私設図書館「うみとやまのこどもとしょかん」による取り組み。代表理事を務めるのは、(一社)Telacoya921代表理事で、まちの保育園鎌倉(小町)の園長でもある中尾薫さん。市内大町や葉山町で4年半続けてきた移動図書館の活動が終了し、新たに「どこでも図書館プロジェクト」と銘打ち、昨秋から支援者の協力を得て本箱を設置。「本と本箱があれば、誰でもどこでも始められる。手持ちの箱で始めてみてほしい」と同館の植田由賀さんは話す。
コバカバの店主・内堀敬介さんも賛同者の1人という訳だ。「店では、1日の、旅の、出会いの…と『はじまりに立ち会う』をコンセプトにしているので、本箱もそのきっかけになるなと」
本は借りられていくことの方が多いが、寄贈も少なくない。誰かを救ったかもしれないメンタル系の本に、地元作家が寄贈してくれたと思しき本もある。40年前のガイドブックが届くこともあるが「古いなら古いで『昔はこんなお店があったんだ』とか、街の歴史を楽しむこともできる。寄贈された本にハンコを押して、時々本を入れ替えてという作業も楽しいです」と内堀さんは笑う。
「もっと本が循環する街になって、知らない人同士がつながったり、交流する場になったら。観光に来た人にも、そんな珍しい面白い取り組みが鎌倉にはあるんだと思ってもらいたい」
循環の「はじまり」
そう話していると、ある女性が内堀さんに声をかけた。本箱の利用者で、十二所で本を循環させる「みちくさ本棚」を今春から開いており、いつか話がしたいと考えていたという。話を聞き、内堀さんは「本箱に置ききれない本があるので、持っていきますか」と提案。鎌倉で新たな本の循環が生まれた。
鎌倉版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|