鎌倉のとっておき 〈第174回〉 かまくら花めぐり(長谷寺:盛夏から)
盛夏の頃は凌霄花(のうぜんかずら)。オレンジ色の花々が和み地蔵を飾る。妙智池(みょうちいけ)周辺では、青紫色の桔梗(ききょう)や細長い柄に薄紫色の花を付ける禊萩(みそはぎ)が咲き始め、これに紅白の蓮が彩(いろどり)を添える。また弁天窟周辺では、白い鉄砲百合や薄紅色の鹿の子百合が咲く。そして蝉時雨(せみしぐれ)が盛りを迎える頃、山門傍や大黒堂脇の百日紅(さるすべり)も、紅や薄桃色など沢山の花を付ける。
境内に静けさが戻る頃、妙智池周辺では、女(おみ)郎花(なえし)が黄色い可憐な花を付ける。また放生池(ほうじょういけ)周辺では、白から薄桃色へと色を変える酔芙蓉(すいふよう)も咲き始める。かたや地蔵堂へ続く路沿いや眺望散策路では、紅白の彼岸花が一斉に花開く。
季節が進むと、大黒堂前などでは、白や青紫色の秋明菊(しゅうめいぎく)が秋風にそよぐ。また放生池周辺では、薄紫の細かい花を付ける藤袴(ふじばかま)や、青紫色の竜(りん)胆(どう)が畔(ほとり)を飾る。かたや眺望散策路の入口では、淡いピンクの子福桜(こぶくざくら)が花を付け、冬の間も訪れる人々の目を楽しませてくれる。そして阿弥陀堂前では金木犀(きんもくせい)が甘く香り始める。
初冬の頃には、放生池周辺で紺菊(こんぎく)や黄色い磯菊(いそぎく)が清楚な姿で咲く。また下境内では、黄色い石蕗(つわぶき)をはじめ、寒椿や山茶花(さざんか)が赤や白の花々を咲かせてくれる。そして紅葉(もみじ)。全山が錦秋(きんしゅう)に染まる光景は圧巻である。
古(いにしえ)より長谷観音の名で親しまれ、見所もいっぱいの長谷寺。四季折々、年間を通して咲く沢山の花々が、訪れる人々を癒してくれる鎌倉随一の花の寺である。 石塚裕之
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