今年メジャーリーグに移籍したトロント・ブルージェイズの山口俊投手とタンパベイ・レイズの筒香嘉智選手に茅ヶ崎からエールを送る人がいる。横浜DeNAベイスターズ選手寮で長年寮長を務めた稲川誠さん(84・東海岸南在住)だ。
山口投手がベイスターズに入団した2005年に寮長に就任した稲川さん。「1億稼ぐようになったら飯でも奢ってくれ」と鼓舞していた。
「彼は起きるのが苦手で」と当時を振り返るように、3年目を迎えたある日、いつものように部屋に起こしに行くと山口投手は憮然とした態度で「寮を出ます」と告げた。その言葉に稲川さんは「もう明日にでも出なさい」と伝え、大分県に住む山口投手の父に連絡をした。すると、まもなく山口投手は「寮を出ません。すみませんでした」と稲川さんに謝罪したという。「元力士の父さんに叱られたんだろうね」と当時を回想した。
山口投手は2017年に読売ジャイアンツにFA移籍し、昨年はセリーグ最多勝を獲得。メジャー移籍が決まると稲川さんの携帯が鳴った。「食事をご馳走させてください」と茅ヶ崎の寿司店に稲川夫妻を招待してくれたのだ。稲川さんは教え子からの粋な計らいに「なかなか日程が合わなかったが行けてよかった。値段以上に味が格別だったよ」と微笑む。
「彼ならできると信じている」
「本音を言うとベイスターズに残ってほしかった。彼は横浜の顔だから」と筒香選手への思いを語る。2009年にベイスターズに入団した筒香選手の面倒も見ることになった稲川さんは「仕付けは全く手がかからなかった」と懐かしむ。
プロ初本塁打を放った翌朝、稲川さんは筒香選手の部屋の前に置かれた球団キャラクターを見つける。「何だこんなところに」と手に取るとそこには「日本一の寮長」というメッセージが。ぬいぐるみは今でも宝物だ。
昨年、横浜スタジアムで始球式を務めた稲川さん。「筒香が打席に立つはずだった」と話したが、筒香選手は前日の試合で死球を受け、その日はスターティングメンバーから外れていた。試合前、あいさつに訪れた筒香選手は稲川さんと固い握手。「お前はメジャーでは通用しないと言ってきた。ただ、もちろん彼ならやると思っていたよ」と稲川さんならではの思いも。
今週メジャーリーグも開幕。「大変な世の中になったが、頑張ってもらいたい。心配だけど楽しみにしてるよ。外国から日本を眺めてもらいたい」。稲川さんは2人に温かいエールを送った。
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