
舞台は、屋上のフットサル場--。コロナ禍で、演劇公演の中止が相次ぐ中、感染対策のために、野外に設けられた”1人用テント”から本格芝居を鑑賞するという「新しい演劇のカタチ」に挑戦する劇団を取材した。
陽射しが差すも、キリリと冷たい空気が流れる12月下旬、イオンスタイル湘南茅ヶ崎屋上の「岡崎慎司フットサルフィールド」では、熱のこもった演技が披露されていた。1人テントの中では、毛布や防寒ウエアに身を包んだ観客が、目前まで迫る役者の演技を食い入るよう、そしてリラックスした様子で楽しんだ。
ここはフットサル場。もちろん、暗転も舞台袖も、照明による演出もない。出番を終えた役者は、奥に配されたテントへとはけていく。場面転換にはカラーコーン、地声とマイクを使い分ける。
こんな一風変わった演出で観客を惹き込むのは、県内で活動する俳優・山猫智代さん(29)と演出家・犬野玲子さん(29)によるユニット『犬猫会』だ。「オンライン演劇」に切り替える劇団が増える中でも、2人はあくまでもリアルな演劇にこだわった。「同じ空間・時間を共有してこそ演劇。客席と相互に空気がやりとりされ、空間全体が一つの共同体のようになる感覚はリアルな舞台でしか生まれない」と、1人テントによる野外公演に挑戦することに。会場探しに苦戦する中で出会ったのが、同フットサル場だった。「スポーツと文化の交流の場にしたい」と考えていたスタッフの宇野あかりさんが快諾し、実現した。
会期中は売れないお笑い3人組の悶着や、”都内で働く娘”の帰省を巡る家族のバトル、訪問介護士の葛藤など、コロナ禍で浮き彫りになった、様々な問題に切り込んだオリジナル短編4作品を、シリアスかつコミカルに演じた。
観客らは「自分のためだけに演じてもらっているような贅沢さがあった」「時代を反映した深いテーマの脚本で、演出も斬新で秀逸だった」と評していた。
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