茅ヶ崎市が、2つの自治会に防犯灯の電気料金として交付した補助金約1900万円を返還するよう求めた裁判で、横浜地方裁判所は4月8日、市の請求を棄却する判決を言い渡した。市は4月25日、控訴しないことを発表した。
裁判の経緯
この裁判は、市が防犯灯の電気料金として交付してきた補助金が「本来の目的とは異なる用途で使用されていた」として、鶴が台団地自治会に対して約1052万円、浜見平団地自治会に対して約826万円を返還するよう求めたもの。
もともと市は、市内各地に設置した防犯灯の維持管理を自治会・町内会に任せる代わりに電気料金として補助金を交付しており、浜見平団地には入居が始まった1964年、鶴が台団地には68年から一定の算出基準に基づき支出されてきた。
この補助金事業は96年に見直され、市が直接防犯灯の維持管理を行い、電気料金も電力会社に直接支払うことになった。
しかし、マンションや団地が防犯灯を所有している場合は、直接の管理が難しいことなどから、両団地では自治会への補助金支出が継続された。
市は2005年、補助金事業全体の見直しを実施。「補助金支出の根拠」として、市と両自治会との間で06年に協定が締結された。
ただ両団地では、電気料金は都市再生機構(UR)が全住民から集めた共益費から電力会社に支払われており、交付された補助金は自治会の活動資金に充てていた。
こうした事実は、16年に鶴が台団地の定期総会に出席した市議会議員が指摘したことをきっかけに問題となった。
その後、市と自治会側との協議が平行線をたどったことから市は「本来の目的以外の使い方であれば是正しなければならない」として19年3月、両自治会に対し06年から16年までに支払った補助金を返還するように求める裁判を起こした。
「電気料金に」義務だった?
裁判では、市が主張する「補助金を電気料金に充当すべき義務があったか」(負担付贈与の成否)が争点となった。
自治会側は、防犯灯の維持管理を担ってきた自治会に対して補助金が出されていたことは合理的とし、仮に市の主張(負担付贈与)が認められたとしても、自治会がURに対して電気料金を支払っていて債務を履行したといえること、自治会はURが作成した支払い証明書を提出するなどしており「市は補助金が直接電気料金として使われていないことを知っていたにもかかわらず、協定違反を主張して解除権を行使することは、信義則(相手方の信頼や期待を裏切らないように誠意を持って行動することを求める法理)に反する」と主張した。
今回の判決で裁判所は、自治会側の主張を概ね認めた。
補助金が電気料金に充当されるべき義務が発生していたかについては「自治会側が承諾したと認めるに足りる証拠はない」などとして、市の請求を棄却した。
市「司法の判断真摯に受け止める」
市は4月25日、「市の主張は認められなかったものの、協定違反の事実がないことが確認され、補助金の返還を求める必要がないため、控訴しない」と発表。佐藤光市長は「司法の場で出された判断については真摯に受け止めます。今後も地域の皆様と連携し市政を推進します」とコメントを出した。
自治会「市との信頼回復時間かかる」
浜見平団地自治会の奥山茂会長は「我々の主張が認められ、市が控訴しなかったことについてはほっとしている」とする一方で「市との信頼関係は大きく損なわれ、その回復には時間がかかると感じている」と話す。
また鶴が台団地自治会の青木有倶会長は「市担当者が控訴しない旨を伝えてきた際にも、謝罪や釈明は一切なかった。私たち自身も少なからぬ時間と費用を裁判のために使い、また結果的に市民の税金が無駄に使われた。事務の引き継ぎ状況など、職員の体制がどのようになっていたのか、裁判を許容した市議会にも今回の件をきちんと検証してほしい」とした。
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