連載Vol.6 世界が切り替わる魔法の言葉
鍼灸師・カウンセラーの鈴木友紀子さんによる、人生を大きく変えた一言や救われた一言、それにまつわるエピソードと「言葉の持つ力」について紹介する連載コラムです。
受け取れた一言 「ありがとうが言えたよ」
痛みに苦しむKさん(女性)の緩和ケアに伺った時のこと。ほとんど食事が取れず、鍼では刺激が強いので、軽く触れるヒーリングを施していました。
すると、Kさんが話し始めました。
「これまで良かれと思ってお世話してきたんだけど、人の親切はなかなか受け取れなくてね。お礼を伝えているのだけど、どうしても母にだけは許せなくてね。もう亡くなってるしね」
「じゃあ今伝えましょうよ!」
「もう遅いわよ」
「そんなことないですよ、きっと届きます。勇気出して言ってみたらいかがですか?」
そう伝えて、しばらく身体を摩っていると、「ありがとう」と小さな小さな声が聞こえました。
込み上げる気持ちを抑えて「言えましたね」とそっと声をかけると、「言えたー」とKさんは振り絞るように深いため息をつきました。
その数日後、Kさんは空へと旅立っていきました。
感謝って人に伝えているようで自分に伝えているのだと思います。
この世での大きな荷物を降ろして、今頃お母様と楽しくお話していることでしょう。
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