学芸員のイチ推し! -連載 Vol.8-
海上の女神と幕末柳島の藤間家
堂々とした筆致の「天后嬢々」。この書幅は、江戸時代に柳島で代々名主を務めていた藤間家に残されていたものです。「天后嬢々」とは、東アジアで広く信仰された航海・漁業の女神・媽祖(まそ)のことを指します。藤間家は廻船業も営んでいたため、この文字が選ばれたのでしょう。
また、この書は、江戸時代後期の書家であった秦星池(はたせいち)によるものです。幕末の藤間家の当主であった藤間柳庵(りゅうあん)は、秦星池に師事しました。「天后嬢々」の書は、文政4年(1821)8月、星池が藤間家に滞在していたときに記したものと考えられます。
柳庵は、非常に多彩な顔をもつ人物でした。藤間家の当主として名主を務めるとともに、家業の廻船業を営みつつ、さらには、上記のような書をはじめ、俳句や狂歌などの文化的活動を精力的に行っていたのです。
今年は、その柳庵が没してから140年目の節目の年にあたります。茅ヶ崎市博物館では、4月29日(土・祝)から7月9日(日)まで「幕末の柳島に生きる」と題して、柳庵の足跡やゆかりの品々などを紹介します。この機会にぜひいちど、藤間家の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
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