学芸員のイチ推し! -連載 Vol.21-
村々のみぢかな仏教画、仏涅槃図(ぶつねはんず)
毎年2月15日、仏涅槃図と呼ばれる絵画が各地の寺々に掲げられます。当日は仏教の開祖・釈迦(しゃか)の命日であり、涅槃会(ねはんえ)という仏事が行われます。仏涅槃図には、釈迦の死の場面が描かれています。仏弟子や動物たちまでが彼の死を悼(いた)んで集(つど)い、慟哭(どうこく)しています。鑑賞のポイントを2点、取り上げてみましょう。
まず、画面上方には満月が描かれています。陰暦の15日は、「十五夜」という言葉のとおり、必ず満月でした。仏涅槃図に描かれる月も、例外なく満月です。
次に、釈迦の寝台を取り囲む沙羅(さら)の樹に注目してみましょう。釈迦が亡くなった際、一双の沙羅の樹が、その死を悲しんで白く枯れたとされます。『平家物語』の冒頭にある「沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色」とは、まさにこの場面のことを指しています。釈迦ほどの素晴らしい人も死んでしまう。勢いのあった人も必ず滅びてしまう。「沙羅双樹の花の色」という言葉からは、そうしたイメージを連想することができるのです。
茅ヶ崎市博物館では、7月7日(日)まで、春の特別展「東海道中お寺めぐり」において、広徳寺(小和田)と円蔵寺(十間坂)の仏涅槃図を展示しています。ぜひ両図の違いを楽しんでみてください。
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