市内甘沼在住で、性同一性障害と診断された小林このみさん(24)を描いたドキュメンタリー映画『空と、木の実と。』が、国内外で話題を呼んでいる。「女」として生まれ、手術や戸籍変更によって「男」になった小林さん。しかし、性転換して感じたのは、性別は自身にとって取るに足らないということだった。
映画は、NHK時代に取材で小林さんと出会った常井(とこい)美幸さん(53)が監督を務めた。小林さんが高校1年生だった頃から、性転換を経て現在に至るまでの約9年間を追いかけた記録。小林さんが主演、ナレーターを担当した作品は7月に完成し、自主上映会という形で要望のあった東京や大阪、仙台などで流され、「ソウル国際女性映画祭」にも招待された。そして9月28日には、小林さんが3年前から暮らす茅ヶ崎で初となる上映会が、「カフェのあるめがね屋さん一丁目四番地」(共恵)で開かれた。
セーラー服を切断
小林さんは川崎市で生まれ育つ。性別は「女」、名は「花菜」。活発だった女の子が、違和感を覚えたのは小学5年生の時だった。「なぜ自分は赤いランドセルなのだろうか」と。その違和感は徐々に膨らみ、「修学旅行で女子部屋になったり、先生から生理の話を聞かされたり。それまで男女問わず友達と遊んでいたのに、自分は女の子の枠に入れられて」。母・美由起さん(58)は当時について、「洋服は自然と男ものを選んでいたが、好きなものを着ればいいと私は思っていた。でも、高学年になると子どもの笑顔が雲っていった」と回顧する。
中学生になると、待っていたのはセーラー服。制服を着るのが嫌で、学校から足が遠のいていった。そして中2の1月、病院で”性同一性障害”と診断された。その時の心境を小林さんは打ち明ける。「症状がわかったときは大喜び。違和感の原因がわかったから」。家に帰るとセーラー服を切り裂き、その後は学ランで通い、名前も「空雅(たかまさ)」に改名した。休み時間には教室で腹筋や腕立て伏せ。演劇部やよさこいソーラン同好会では中心を担い、自分らしさを取り戻していった。
国内最年少の性転換
18歳で胸を除去。日本のガイドラインで、性別適合手術ができるのは20歳になってから。20回目の誕生日を迎えた1月9日の5日後、小林さんは子宮と卵巣を取り除いた。国内最年少での性転換だった。「あるはずもない胸もなくなり、やっとマイナスから0になった」
戸籍も変更し、念願の「男」になった小林さんは、夢だった声優への活動もスタート。しかし、アルバイト先などで男性扱いされることに、再び違和感が募った。「今まで女性じゃないから男性だと思っていた。でも、自分は男性でもない」。名前の読みを「このみ」に変え、「女でもなく、男でもない。小林このみという人間で生きていこう」と決めた。今では、詩人、アクセサリー作家、ナレーターなどで活動の幅を広げようとしている。
「男女」ではなく「人間」、「LGBT(性的少数者の総称)」ではなく「人間」。「私はLGBTにも当てはまらないと思う。周りに理解してほしいわけじゃない。映画を通じこういう人間がいることを知ってほしい」と小林さんは語る。映画のタイトルに「。」を入れた常井監督は、「マルではなくゼロ。すべてがそこから始まる。人が自分らしさを大事にして生きれば、この世の中すごく生きやすくなる」と思いを込めた。11月2日(土)にも「カフェのあるめがね屋さん」で上映。申し込みは同店【電話】0467・86・1002へ。
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