近年、人気のマリンスポーツ・SUP(以下サップ)による海難事故が多発する中、2021年に茅ヶ崎市沿岸で発生した事故が全国最多を記録したことが湘南海上保安署(藤沢市)への取材でわかった。気象の変化に伴い、北風に変わる9月以降に事故が増加する傾向があることから、同署では利用者に注意を呼び掛けている。
サップとは、Stand Up Paddle board(スタンドアップパドルボード)の略称で、ゴムのボードの上に立ち、パドルをこぎながら波乗りをしたり、釣りやヨガをしたりと、さまざまな楽しみ方がある。加えて、サーフボードよりも大きめで浮力が高く、安定感があるため、初心者でも短時間練習すればボードの上に立てるとされる。
こうした手軽さも手伝って利用人口が増える中、全国でのサップによる事故は増加している。同署によると、2021年に全国で発生した事故は5年前の16年の14件から5倍となる70件。そのうちの11件(約15・7パーセント)を茅ヶ崎市沿岸での事故が占める。
新しいマリンスポーツの流行が全国的にも早く、事故の発生件数も最も多い第3管区内(関東周辺)の湘南管内でも茅ヶ崎での事故が半数超を占め、突出している。
帰還不能が多発
茅ヶ崎で起こる事故の多くは「帰還不能」のケース。ネット上などでサップのメッカとなっている、えぼし岩を目指す初心者レベルの人が多く、往路は陸地から海に向かって吹く北風に流される形で推進して到着するが、復路は逆に向かい風を受けて戻ることができなくなる。事故者の8割が経験年数3年未満の人だという。
風向きなど事前確認を
今年は8月19日時点で茅ヶ崎でのサップ事故は起こっていないが、風向きが北風に変わる9月以降に事故が起こりやすくなることから、現在、同署では警戒を強めている。同署地域海難防止対策官を務める相澤篤史さんは「利用する際は風向きなどの変化を気象予報などで事前に確認することや、携帯電話を忘れずに。もしも元に戻れなくなった場合は、海上での緊急通報用の電話番号118番に落ち着いて連絡を。皆で安全に楽しんでもらえれば」と呼び掛けている。
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