茅ヶ崎で育ったコーヒー豆をもとに、クルーズタウンコーヒーロースターズ(共恵)とおイシイ農園(萩園)によってこのほど、スペシャリティコーヒーに匹敵するコーヒーが誕生した。県内はもとより、国内でもコーヒーの生豆が生産されるのは珍しいとされることから、今後は試飲会などを通じて「茅ヶ崎コーヒー」を広く発信し盛り上げていきたい考えだ。
4月上旬、同農園の石井政輝さんから「コーヒーの木に実がなった」との連絡を受け、同店の篠田琢さんが同農園を訪問。コーヒーの木に生豆の元となるコーヒーチェリーがなっているのを初めて目の当たりにし、驚かされた。篠田さんによると、日本でコーヒーチェリーを栽培しているのは沖縄県などの一部の農家だけだという。
同農園ではミニトマトを栽培している場所の一角を使い、5年前から「新しいものを育ててみよう」とコーヒーの木14株を育て始め、今年に入り初めて実を付けた。開花時はジャスミンのような香りがハウス一杯に充満したという。
育てた品種はアラビカ種カトゥーラで、コロンビアなど中南米では主力。15度から24度がコーヒー栽培での適温とされる中、同農園では春・夏は屋外、冬はハウスで管理した。果肉は酸味がなく口中にまろやかな甘さが広がるのが特徴だ。
手間を要し苦戦も
コーヒー豆を精製する手法の一つであるアナエロビックという発酵による処理方法を施した生豆と、同農園で収穫したコーヒーチェリーを持ち帰った篠田さんは、サンプルを作るためパーチメント(コーヒー豆を覆う薄い殻)を手作業で取り除き、早速焙煎。豆を挽いて淹れ、試飲すると「角の取れた柑橘系の優しい酸味と、若干とろっとした甘さがあり、かつクリーンで雑味がない」と手ごたえを感じた。
その後、果肉がついたままの状態で天日干しにする「ナチュラル」、果肉を剥いてパーチメントの周りに付着したミューシレージ(ぬめり気のある組織)が付いたまま乾燥させる「ハニー」、密閉容器で発酵させてから果肉のまま乾燥させる「アナエロビック・ナチュラル」の3種類の製法でコーヒー豆の精製に挑戦。パーチメントを剥くために家庭用精米機も購入して脱穀するなど工夫したが、ナチュラル、ハニーは4・5月の低温、多湿の気候が影響し、乾燥に約1カ月半を要し手間もかかるなど苦戦した。それでも、3つの製法によるサンプルが完成。結果として、14本のコーヒーの木からチェリー約12キログラム、生豆1・12キログラムの生産に成功した。
今回の結果について、篠田さんは「実際に果肉からコーヒー豆にしたのは初めて。良い経験をさせてもらった。石井さんに感謝です」と話す。石井さんは「今年初めて本格的に収穫できたが、収穫してから飲めるようになるまでの手間が大変重要だと感じた。これを機にミニトマト同様、味良く多収の技術向上に努めていきたい」と今後を見据える。
試飲会や全国への発信も
完成したサンプルについて有資格者にカッピング評価を依頼したところ、非公式ながらスペシャリティクラスの結果を得たことから「自信を持って提供できる」と篠田さん。販売価格の設定、生産方法など課題はあるが、「輸入に頼っていたコーヒー豆が地産地消できれば面白い。試飲会はもちろん、店内での実飲、販売も今後検討していきたい」とし、「すごく夢がある。地元茅ヶ崎からコーヒー文化をさらに盛り上げていきたい」と意気込む。
ゆくゆくは「茅ヶ崎コーヒー」の名を全国に。夢はさらに広がる。
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