ダブルのスーツに身を包んだ角刈りの男性と女性司会者が軽妙なトークで番組を進行し、生バンドの演奏に乗せて次々と昭和のヒットソングが披露される―。Z世代と言われる若者が、昭和へのオマージュを詰め込んで作った動画が話題となっている。その名も「夜のベストパレード 昭和98年12月16日放送回」。昨年末に公開されるとじわじわと再生回数を伸ばし、2月12日時点で7万回に迫る。実は撮影されたのは茅ヶ崎市民文化会館。企画から、出演、編集にまで携わったという茅ヶ崎市内在住の男性に、取材を敢行した。
件の動画を制作したのは映像サークル「齋藤會」を主宰する齋藤竜一さん(23)。昭和なコンテンツを愛し、普段から動画サイトを回遊しては「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」を視聴しているという。2年ほど前、「昭和な歌番組を今に再現したら面白い」と思いついた。
そこから企画を練り上げ台本を作成、資金や出演者、撮影スタッフ、演奏してくれるバンドメンバーを集めるなど、実現に奔走してきた。
撮影は昨年5月。市民文化会館を会場に選んだのは地元ということもあるが「(アイドル雑誌の)『明星』(フリマアプリなどで買い集めているそう)を読んでいたら、渡辺美奈代さんがコンサートをしていたことが分かった。だったらもう文化会館はアイドルの聖地じゃないか、と」。
動画では自ら出演し、番組司会者を務める。「井上順さんを意識した」と、出演者には遠慮のない発言を連発。撮影用のカメラはレンズに当時のものを使って、フレームワークなども「昭和らしさ」を追求。また曲名などに使用している書体、番組の途中に差し込まれる「オネショナルの冷蔵庫・富士山」など架空のCMまで作り、とことんこだわった。
昨年12月、動画が公開されると「昭和を見ていない若者が作ったとは思えない再現度」などと話題になり、公開から2カ月で6・9万回再生を記録している。齋藤さんは「多くの人に興味を持ってもらえてうれしい」と笑顔を見せる。
「作り手の情熱感じた」
齋藤さんと「昭和」との出合いは小学校3年生の頃。親戚から借りた『ウルトラQ』のDVDがきっかけだった。
「ストーリーやキャラクターも面白かったが、それ以上に感じたのが作り手の情熱。例えばケムール人という怪獣が観覧車を破壊するシーンでは、こんなすごいセットを作るなんて、どれだけの労力がかかっているんだろうと。カメラには映らない人たちのことも考えていました」。
その後も『トラック野郎』や『仁義なき戦い』から『あぶない刑事』まで、「特に男の色気が漂う作品」を中心にむさぼるように鑑賞。高校生になるとSF研究部に所属して本格的に映像作品を撮るようになり、高校生を対象とした映画イベントで受賞を重ねた。
2019年には「クリスマスエキスプレス」の再現動画を制作し、こちらも8万回近い再生回数を記録している。
「みんなが青春」
今後は「『オールナイトニッポン』のようなラジオ番組風動画」の公開を予定する。「『トップガン』のパロディーを作ったら面白いんじゃないかな。まだまだ撮りたいものがたくさんある」と、創作意欲は衰えることを知らない。
動画は収益化できる設定ではないため、どんなに再生回数が伸びてもお金にならないそう。普段はイベント関係の会社で働き、コツコツと費用をためている。
さまざまな作品から感じる昭和の魅力について「みんなが生き生きと、好きなものに取り組んでいるのが伝わってくる。社会全体が青春をしている感じ」と齋藤さん。次回作にも期待だ。
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