101年前の9月1日、関東大震災の液状化現象によって茅ヶ崎市下町屋の田んぼから突如、木の柱が出現した。これらは後に鎌倉時代の橋脚の跡と判明する。茅ヶ崎市教育委員会で同史跡の調査や保存に携わってきた大村浩司さん(70)がこのほど、『旧相模川橋脚 関東大震災によって蘇った中世の橋』(同成社)を出版した。「知れば知るほど面白い、この史跡の魅力を多くの人に知ってほしい」と話す。
大村さんは1980年、茅ヶ崎市役所に入庁。埋蔵文化財や遺跡、史跡の調査・保護に従事してきた。「旧相模川橋脚」でも98年ごろから、調査に参加しており、今回の著作は発見から保存への道のりや遺跡としての考古学的特徴、発掘調査で判明した事実などをまとめた。
「旧相模川橋脚の魅力は、史跡と天然記念物の両方に指定されていること」という大村さん。橋脚は震災後、歴史学者の沼田頼輔によって、鎌倉時代の1198(建久9)年に、源頼朝の重臣・稲毛重成が亡き妻の供養のために架けた橋の橋脚と考証され、1926(大正15)年に国の史跡に指定された。
さらに2013年3月には「関東大震災の地震状況を残す遺産」として天然記念物に。大村さんは「史跡と天然記念物の両方に指定されている場所は全国的にも十数カ所しかない」と話す。
保存の過程にも注目
また、大村さんは橋脚が「現在の形で残っている」ことにも注目する。
「国の史跡に指定された際には、地域からの働きかけも大きかった。震災で大きな被害を受けたばかりで、ヒノキの柱が売られたり燃やしたりされても不思議がないのにそうはしなかった。地元の人たちの『初動対応』がよかったからこそ、残ってきた」という。
そのうえで「近年の文化財保護は『地域と一緒になって』が主流。多くの人に史跡の本質的価値を知ってもらいながら、守り受け継いでいけたら」と話した。
四六判・136ページで税込1980円。長谷川書店などで販売中。
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