学芸員のイチ推し! -連載 Vol.23-
「赤とんぼ」を作曲した山田耕筰の直筆書簡
夕方のチャイムで馴染み深い「赤とんぼ」は、茅ヶ崎で作られたことをご存じでしょうか。大正15年(1926)の秋から6年ほど茅ヶ崎に住んでいた山田耕筰は、「赤とんぼ」の曲想を職場がある新橋までの列車内で練り、昭和2年(1927)1月29日に完成させたといいます。そんな耕筰直筆の書簡が、夏の特別展「海と音楽の近代史〜「湘南サウンド」前夜〜」において展示されています。
この書簡は、耕筰の指導を受けたテノール歌手の石山卓氏に宛てられたもので、昭和30年(1955)に開催された石山氏の独唱会に向けて送られたと考えられます。
石山氏は、耕筰が作った日本初のオペラ「黒船」初演に出演していた人物です。耕筰は、石山氏の張りのあるテノールを病中の楽しみにしており、会の開催を喜んでいました。石山氏に日本人の歌手として「日本語で歌唱する」意義を強く意識していくべきだと望み、一層の活躍を期待するのでした。添え書きには、「知らぬ間にいいパパになったねえ」と書かれ、親密な関係であったことが伺えます。
また、博物館の市民交流スペースでは、特別展と同じ10月14日(月・祝)まで特集展示「写真とことばで知る茅ヶ崎の関東大震災」を開催しています。
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