湘南幼児学園(茅ヶ崎市汐見台)は、国立長寿医療研究センター、吉本興業、立命館大学と共同で、お笑いと音楽で認知症予防や認知機能の緩やかな進行を図る介入研究事業「Petit(以下プチ)笑店」を行っている。8月から10月までの期間で実施され、高齢者と同園の幼児らが研究プログラムに取り組む。同様の研究に幼児らが採用されるのは世界初という。
介入研究とは、ある取り組みが病気の予防や治療などにつながるかを調べる研究を指す。その事業である「プチ笑店」では吉本興業のお笑い芸人の指導による漫才と、トーンチャイム演奏を行い、認知機能の低下や抑うつの予防を図る。基本的には軽度認知障害または認知症と診断を受けた65歳から95歳までの高齢者とその家族が対象だが、今回は同園が事業に加わったことから就学前の3歳から6歳の幼児と保護者が参加することになり、多世代交流による新たな介入研究へと発展した。
高齢者と幼児が共に体験活動することで、幼児の保護者が子育てによる抑うつから改善されるほか、幼児も高齢者との触れ合いによって寛容性やコミュニケーションスキルの醸成が期待できるとされる。最終的には高齢者の意識の変化、心身の健康増進、社会的孤立からの予防につなげ、社会的課題の解消を目指す。
「ボケ」「ツッコミ」で笑い
8日に行われた第3回には、お笑い芸人の木下弱さんとこじまラテさんが漫才の講師として参加。2人の指導のもと、高齢者と幼児が2人1組になってネタづくりに挑戦し、「ボケ」と「ツッコミ」の視点から互いにアイデアを出し合い完成。漫才の披露では高齢者が「私の名前はトンビです」と口にし、すかさず幼児が「なんでやねん」とツッコミを入れると、会場からは笑いと拍手が起こった。
トーンチャイムの演奏では懐かしの童謡に合わせて音を出す中、回を重ねるごとに上達していく様子が見られた。
研究事業は10月まで実施され、12月には一度、研究結果をまとめてシンポジウムを開催する。
長年にわたりこの研究に携わる、立命館大学教授の清家理さんは「昭和リバイバルで古き良き時代の『多世代交流』を再現し、身近な娯楽のお笑いと音楽で『認知症共生社会』や『誰一人取り残さない社会』を目指します」と話す。同園代表の田中重徳さんは「これからの未来は、子どもたちの成長力が源となります。子どもたちと地域の方を支える拠点として、積極的に課題に取り組んでいきたいと思っています」としている。
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