茅ヶ崎市内在住の作家・鳴神響一(なるかみきょういち)さん(53)が、第3回「野村胡堂文学賞」を受賞した。この賞は「銭形平次補物控」等を著した野村胡堂が初代会長を務めた「一般社団法人日本作家クラブ」が、2012年に創設。商業出版された時代小説と歴史小説を対象に、同クラブが専門家の協力の下予備選考を行い、会員による投票を経て上位3作品を選考。その後、審査委員会で受賞作を決定するもの。
これまで第1回は小中陽太郎さん、第2回は塚本靑史さん、高橋英樹さん(特別賞)が受賞している。
野村胡堂の誕生日にあたる10月15日、鳴神さんは関係者らとともに神田明神を参拝し「銭形平次の碑」の前で記念撮影を行った。その後、明神会館で開かれた授賞式・祝賀会には来賓や関係者、友人ら170人ほどが出席。当日を振り返り、鳴神さんは「第1回、2回に受賞されたのは作家の大先輩で著作も多い先生方なので、今回自分が選ばれて恐縮です。デビュー作が受賞となり身の引き締まる思い」と語った。
受賞作は運命の愛描く歴史時代小説
受賞作「私が愛したサムライの娘」(角川春樹事務所刊行)は、以前から構想を練り原案を温め、一昨年に3、4カ月の期間をかけて仕上げた歴史時代小説。
作品の舞台は、八代将軍・徳川吉宗と尾張藩主・徳川宗春の対立が水面下で繰り広げられる元文の世。尾張徳川家に仕える甲賀忍びのくノ一・雪野は、幕府転覆を謀る宗春の願いを叶えるべく、長崎へ向かう。出島の遊郭に太夫として潜入した雪野は、そこで運命的に出会った蘭館医師・ヘンドリックと互いに惹かれ合っていく-。
鳴神さんは、茅ケ崎北陵高校卒業後、中央大学法学部を経て県内の小学校事務職員として勤務する中、10年前に作家になろうと新人賞に応募。働きながら小説の書き方を学ぶ教室に通うなどして執筆を続けた。
それでもデビューが叶わずにいたところ「甘えを捨てよう」と昨年3月にフリーに。そして今回の受賞前の昨年5月、同作が「第6回角川春樹小説賞」に選ばれ作家デビューが決まった。
今年6月には角川春樹事務所から、日本の海賊とエスパニア海軍の戦いを綴った2作目「鬼船の城塞」が刊行された鳴神さん。今後については「今回の受賞でプレッシャーがかかるが、これまで以上に、読者の方が『面白い』と感じる作品を生み出していきたい」と次作への意欲を滲ませた。
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