住宅街の一角でパン作りを教える 藤澤 真美さん 倉見在住 47歳
ママはもっと楽しめる
○…目立った看板もない瓦屋根の家でパン教室を開いている。以前は町内外や都内からも受講生がやってきたが、新型コロナの影響で休校を余儀なくされ、今はオンライン講座を準備中だ。遠隔会議アプリを使った場合に受講生が材料をどう用意するのか、課題もあるが、語り口からプラス思考がにじむ。「画面に映る上半身だけ着替えて、下はパジャマで大丈夫」とやる気満々だ。
○…独身時代、得意料理といえばホットケーキだった。台所に立とうとすると家族に「やめたら」と心配される。これは花嫁修業が必要と思い、料理教室で体験したのがパン作り。こねた生地は赤ちゃんの肌のようで、その触り心地と味に魅せられた。教室に通い続けたのが縁になり、そのまま教室に就職。まさかの教える側になった。
○…出産を機に教室を辞め、地元の横浜から夫の実家がある寒川に移住した。場所も知らなかったが、空の広さと富士山の近さに驚いた。子どもが生まれると生活は一変。曜日の感覚がなくなり「しっかり育てなきゃ」という思いとは裏腹に赤ちゃんの体重が増えず、ふさぎこんだ時期も。ある日ママ友と一緒にパンを焼いてみたところ、大いに盛り上がった。「これを仕事にしたら」と背中を押され、教室を始めたのが7年前。授乳中でも参加できるようにし、生地をこねながら子育ての悩みを聞く。気づけば受講生の赤ちゃんが少年になっていた。
○…春の外出自粛期間について聞くと、家族で悠々自適に過ごしていたという。「最高でしたね。思いっきり寝坊して朝と昼のご飯を一緒にしたり。あの時間に戻りたい」とマスクごしの笑顔が見えた。発酵を待つ時のように、力をぬいて楽しんで。そうパンが教えてくれたのか。