中瀬で子ども食堂「えんがわ」を運営する 吉田 陽子さん 岡田在住 64歳
温めつづけて5年
○…親が他界し、空き家となった家を活用して立ち上げたのが、子ども食堂だった。5年前は町内でも珍しく、茅ヶ崎の実施例を見学しながら、食育を根本と心に決めた。旬と栄養バランスのとれた献立を考えてくれる仲間、野菜を提供してくれる人もいる。来場した子は延べ600人以上。運営の醍醐味は子どもたちの成長を目の当たりにできること。苦手なおかずが食べられるようになった子。落ち着かなかったあの子も、小さな子の面倒をみるお兄ちゃんになった。
○…自身も中瀬育ちでいわゆる「鍵っ子」だった。勤めから帰り夕飯を準備する親の手際の良さは印象的だった。味噌汁とご飯のごく普通な食卓だったが、日曜日だけは特別で、母が寿司を握ってくれた。平屋建てばかりの中瀬の風景は、次第に2階建てに変わり、子どもがグループで遊ぶ風景が減った。習い事で忙しいのだろうか。
○…結婚し、子どもが幼稚園生になった30代の頃に義母の介護が始まり、その後に実母の介護を担った。十数年にわたる介護を振り返り、さらりと「覚悟はしてました」。次第に細くなってゆく親を見て「食べてくれたら」と願い、どうしたらお互いが楽に過ごせるかを探った。医療相談室で、思いのたけを語りつくした日もあった。助言してくれた人たちの事は忘れられない。
○…現在は自分の時間を「やりたいこと」に注いでいる。点訳や布おもちゃ作りなどボランティアを掛け持ちし「家にこもると具合が悪くなる」が口癖。母の台所を片付けていた時、なぜか包丁や鍋が沢山見つかり、子ども食堂で欠かせない備品になった。コロナ禍で今は弁当配布だが、そろそろストーブを消す季節。縁側も温まり、子どもの歓声が待ち遠しい。