メジャーデビューアルバムを発売したブラジル音楽ピアニスト 今井 亮太郎さん 代官町在住 34歳
指先で紡ぐサウダージ
○…コパカバーナの白い砂浜と青い海、街なかの喧騒―。10年前、リオデジャネイロで過ごした2ヵ月間が、日本で数少ないブラジル音楽ピアニストとしての気概を醸成した。先月発売したメジャーデビューアルバム「ピアノ・サウダージ」は、サンバのエッセンスを吸収したオリジナルに加え、イパネマの娘やTriste(悲しみ)、思い出のポップスナンバーなどを収録。サウダージ(郷愁)という言葉がぴったりの1枚に仕上げた。
○…子どもの頃に聴いたブラジル人オルガニスト、ワルター・ワンダレイの楽曲が、ブラジル音楽への興味を誘った。教員の父はフルート、母はサックスを演奏する一家に育ち、楽器にも自然と親しんだ。「ピアノを始めたのは小学生の時。でも最初は『女みたいで格好悪い』と思った。結局バイエルも終わらなくて、楽譜は今も苦手」と頭をかく。しかし指先で紡ぐ旋律こそが、自身のアイデンティティだという確信があった。
○…大学在学中、演奏の機会を求めて飲食店を訪ね歩いたが「実績もないし、どこも門前払いで。唯一関心を持ってくれたのが、平塚のバーだった」と、地元で音楽キャリアをスタート。ブラジル系ピアニストとして演奏の場を広げ、国内外の著名ミュージシャンとの出会いも生まれた。「今の僕があるのは、お世話になった人たちのおかげ」と感謝の眼差しを向ける。
○…「地元のCDショップや飲食店が、専用のコーナーにCDを置いてくれて。生まれ育った平塚で、皆がCDを手に取ってくれると思うと本当に嬉しい」と弾けるような笑顔を見せる。アルバム発売の3日後、一番の理解者だった父が他界。発売日には、父からCDを購入したと聞き、恩返しができたと喜んだのも束の間だった。自身の誕生日に行った発売記念ライブに招待することは叶わなかったが、ブラジルに燦燦と注ぐ太陽のような演奏を、天国に手向けた。
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